どこで、誰が話している?
スペイン語は21か国の公用語だ。母語として話す人は約5億1,900万人、第二言語の話し手も合わせると約6億3,600万人になる。母語話者の数は中国語に次いで世界で2番目に多い。
名前は「スペインのことば」だが、話し手の大半はアメリカ大陸にいる。いちばん話し手が多い国はメキシコで、母語話者は約1億3,000万人。アメリカ合衆国でも、5歳以上の約4,180万人が家でスペイン語を話している。人口の約13%にあたる。
どんな音がする?
日本語を話す人には聞き取りやすい言語である。母音はa・e・i・o・u の5つだけで、アクセントがあってもなくても音色は変わらない。
難関は r だ。舌を1回はじく「r」と、何度も震わせる巻き舌の「rr」を別の音として区別する。caro(高い)と carro(車)は、この違いだけで意味が変わる。
地域差もある。スペインの北部や中部では、z や ce・ci を英語の th に近い音で読み、s と区別する。中南米やカナリア諸島、スペイン南部では、どちらも同じ「ス」になる。アクセントの位置は規則的で、約8割の単語は後ろから2番目の音節を強く読む。
どんな文字で書く?
ラテン文字で書く。英語のアルファベットにない文字が ñ で、「ニャ・ニュ・ニョ」の音を表す。中世の写本で nn の2文字を、n の上に波線をのせて縮めて書いたのが始まりだ。古いスペイン語の anno(年)は、いまでは año と書く。ñ は n の次に置かれる独立した1文字で、「エニェ」という名前を持つ。
そして、この言語の顔ともいえるのが逆さまの記号だ。
スペイン語では、はい・いいえで答える疑問文が、ふつうの文と同じ語順になることが多い。最後まで読まないと質問だとわからないので、文の頭に ¿ を置いて先に知らせる。スペイン王立アカデミーが1754年の『正書法』第2版でこの書き方を定め、感嘆文の ¡ も同じしくみにした。ただし広まるのはゆっくりで、19世紀になっても ¿ も ¡ も使わない本がある。
文法のクセ
英語の be にあたる動詞が2つある。ser はそのものの性質や正体を、estar はいまの状態を表す。es aburrido は「彼は退屈な人だ」、está aburrido は「彼はいま退屈している」。es listo は「頭がいい」、está listo は「準備ができた」になる。
動詞の語尾で主語がわかるので、主語はよく省く。「わたしはする」は hago の一語で足りる。「あなた」は、親しい相手には tú、ていねいに話す相手には usted。usted は「あなたさまのご厚意」を意味した vuestra merced が縮んだ形だ。複数の「君たち」は、スペインでは vosotros、中南米では ustedes で言う。アルゼンチンなどでは tú の代わりに vos を使う。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
スペイン語は、ローマ帝国がイベリア半島に持ちこんだラテン語から生まれた。ラ・リオハ地方のサン・ミジャン・デ・ラ・コゴージャ修道院の写本には、10〜11世紀ごろ、ラテン語の本文の余白にロマンス語とバスク語で書きこまれた注釈が残る。『エミリアヌス注解』と呼ばれる。
1492年、ネブリハが『カスティーリャ語文法』を書いた。近代ヨーロッパの言語で初めての文法書である。同じ年にコロンブスが大西洋を渡り、ことばはアメリカ大陸へ広がっていく。1713年にはスペイン王立アカデミーが生まれ、いまは各国の22のアカデミーと組んで、ことばのまとまりを見守っている。
いま、この言語は
危機とは無縁の大言語だ。インターネットでも存在感が大きく、利用者数では英語と中国語に次ぐ3番目、ウェブサイトの数では英語に次ぐ2番目に使われている。
国ごとに語彙や発音の違いはあるが、ニュースや本はどこの国の人どうしでも通じる。メキシコの映画とスペインのドラマを見比べると、同じ言語の幅の広さがよくわかる。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
発音から入ると早い。母音は5つ、綴りはほぼ書いたとおりに読めるので、知らない単語でも声に出せる。最初の壁は rr の巻き舌くらいだ。
文法では、ser と estar の使い分けがいちばんの山場になる。「性質か、いまの状態か」と考えながら例文を集めるといい。どの国のスペイン語を学ぶか迷ったら、好きな歌や映画の国を選べば続けやすい。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。