どこで、誰が話している?
エストニア語は、バルト海の北東の端、フィンランドの南の対岸にあるエストニアの公用語である。母語にする人は約110万〜120万人で、そのうち約92万人がエストニア国内に、約16万人が国の外に住んでいる。
2004年にエストニアがEUに加わってからは、EUの24の公用語のひとつにもなった。言葉の決まりごとは、国の研究機関である「エストニア語研究所」がまとめている。
どんな音がする?
いちばんの特徴は、音の長さが3段階あることだ。短い・長い・とても長い(超長)の3つを言い分け、それで意味が変わる。たとえば linna は、長く言えば「町の」、さらに長く引きのばせば「町へ」になる。綴りはどちらも同じ linna なのに、耳で聞くと別の単語なのである。
アクセントは基本的に単語の最初の音節に来るが、強くは響かない。ただし「ありがとう」の aitäh は例外で、うしろの「テャ」に近い音のほうに力が入る。母音は9つあり、日本語の「ウ」と「オ」のあいだのような õ の音が、この言語らしさを作っている。
どんな文字で書く?
文字はラテン文字で、アルファベットは32文字。õ・ä・ö・ü に加えて、š・ž がある。c・q・w・x・y は外国の人名などにしか使わず、f・z・š・ž も外来語専用だ。いまの綴りのルールは、フィンランド語の綴り方を手本にして作られた。
文法のクセ
名詞と形容詞は14の格で形を変える。「〜の中へ」「〜の上から」「〜として」「〜なしで」のような意味を、日本語なら助詞でつけるところを、単語の語尾でつけていく。
反対に、ないものもある。名詞にも代名詞にも男性・女性の区別がないので、「彼」と「彼女」を言い分けない。そして未来形もない。「あした行く」は現在形で言えば足りる。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
エストニア語はウラル語族のフィン語派に属し、フィンランド語に次いで話し手の多いフィン語派の言語である。ヨーロッパの大半を占めるインド・ヨーロッパ語族とは、系統がまったく違う。
いちばん古い記録は、13世紀の『リヴォニアのヘンリーの年代記』に出てくる地名や単語、文のかけらだ。1525年に印刷された本は検閲で焼かれてしまい、残っている最古の本は1535年、ヴァンラートとケルによるルターの『教理問答』のドイツ語・エストニア語訳である。20世紀に入ると、アーヴィクらの言語改革で、新しい語が次々に加えられた。
いま、この言語は
国の公用語として、学校・役所・メディアのすべてで使われ、言語として安定している。国の南部には、ヴォロ語やセト語などの南エストニアのことばがあり、これをエストニア語の方言とみるか、別の言語とみるかは研究者のあいだでも意見が分かれている。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
綴りはほぼ読んだとおりなので、õ・ä・ö・ü の4つの母音さえ覚えれば、すぐに声に出して読める。まずは Tere(こんにちは)と Aitäh(ありがとう)から。
手ごわいのは14の格と、綴りに表れない3段階の長さだ。ここは目より耳で覚えるのが近道になる。フィンランド語を少しでも知っている人なら、似た形の単語にあちこちで出会えるはずだ。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。