どこで、誰が話している?
ペルシア語は、イランを中心に話されている言語だ。イランでは「ファールスィー」、アフガニスタンではダリー語、タジキスタンではタジク語と、国ごとに名前が変わるが、どれも同じペルシア語の仲間で、3つの国すべてで公用語になっている。
話し手は母語で約9,100万人、第二言語として使う人を合わせると約1億3,000万人。見た目はアラビア語にそっくりだが、系統はまったく違う。ペルシア語はインド・ヨーロッパ語族のイラン語派で、遠い親戚はむしろ英語やヒンディー語のほうだ。
どんな音がする?
母音は6つ。短い a・e・o と、長い ā・ī・ū だ。声調はなく、アクセントはたいてい単語のいちばん後ろに来る。「サラーム」なら「ラー」を強く言うと、それらしく聞こえる。
もうひとつの特徴は、単語が子音の連続で始まらないこと。外から入った言葉の頭に子音が並ぶと、あいだや前に母音を足して言いやすくする。
どんな文字で書く?
イランとアフガニスタンでは、アラビア文字をもとにした32文字で書く。右から左へ、つなげて書くのもアラビア語と同じだ。ただしアラビア語にない音のために、پ(p)・چ(ch)・ژ(zh)・گ(g)の4文字を足している。点を増やしたり線を足したりして、借りた文字を自分の音に合わせたわけだ。
反対に、アラビア語では違う音だった ث・س・ص は、ペルシア語ではどれも「s」と読む。タジキスタンでは1930年代の終わりからキリル文字を使っていて、同じ言語が2種類の文字で書かれている。
文法のクセ
ペルシア語には文法上の性がない。「彼」も「彼女」も、代名詞は ou(او)ひとつで言う。語順は日本語と同じく「主語・目的語・動詞」で、動詞が文の最後に来る。
おもしろいのはエザーフェと呼ばれるつなぎの音だ。名詞のあとに「-e」をはさむと、うしろの言葉がかかる。ketāb(本)と man(私)で ketāb-e man(私の本)。飾る言葉は日本語と逆に、うしろに並んでいく。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
いちばん古い姿は古代ペルシア語。紀元前6世紀、ダレイオス1世が岩山に刻ませたベヒストゥン碑文に残っている。その後、ササン朝(224〜651年)の中期ペルシア語を経て、8世紀ごろからいまの近世ペルシア語になった。7世紀にアラブの支配を受けたあと、書き文字はアラビア文字に替わり、語彙もアラビア語から多く借りた。
それでも言語そのものは入れ替わらなかった。詩人フェルドウスィーが977年に書き始め、1010年に完成させた叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』は約5万対句。アラビア語由来の語は約9%にとどまる。いまのペルシア語が1000年前とあまり変わらないのは、こうした作品があったからだともいわれる。のちにペルシア語はインドのムガル帝国でも宮廷の言葉になり、ウルドゥー語やオスマン・トルコ語に多くの語を残した。
いま、この言語は
話し手は多く、危機の心配はない。1000年前の詩がいまも読まれ、新年のノウルーズや冬至のヤルダーの夜に、14世紀の詩人ハーフェズの詩集を適当に開いて占う家庭があるほど、詩は身近だ。
ペルシア語は、ほかの言語にも旅をしている。パジャマは pāy-jāma(脚の衣)、バザールは bāzār、キャラバンは kāravān。チェスの「チェック」は王を意味する shāh から来ている。借りるだけでなく、貸した言葉も多い言語だ。いまのイランでは「ありがとう」にフランス語の merci(メルスィー)もふつうに使われている。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
文字はアラビア文字を覚えるところから始まるが、文法は意外とやさしい。性の区別がなく、動詞の活用も規則的なものが多い。語順が日本語と同じなので、文の組み立てで迷うことも少ない。
アラビア語の単語が多く入っているので、あとでアラビア語に進むときにも役に立つ。短い詩を声に出して読むのも、この言語らしい入り口だ。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。