どこで、誰が話している?
フランス語の話し手は、世界で約3億2,000万人(フランコフォニー国際機関・2022年)。英語、中国語、ヒンディー語、スペイン語に次いで、世界で5番目に多い。ただし母語として話す人は約7,400万人で、大半は第二言語として使っている。
フランスのほか、ベルギー、スイス、カナダ、そしてアフリカの多くの国で使われ、公用語にしている国は20を超える。意外なのは分布だ。話し手の約62%はアフリカに住んでいる。「フランスのことば」というより、いまは「アフリカでいちばん話し手が増えていることば」のひとつである。
どんな音がする?
特徴は3つ。まず鼻母音。息を鼻に抜きながら出す母音が最大4つあり、「アン」「オン」と書きたくなるが、最後の「ン」で舌をつけない。次にのどの奥で出す r。舌先を巻かず、うがいに近い場所でこする音だ。
そして強く読む場所は、いつも語のおしりの音節。h は書いてあっても発音しないので、hôtel は「オテル」になる。全体に、切れ目なくなめらかにつながって聞こえるのは、このあと出てくる「リエゾン」のせいでもある。
どんな文字で書く?
ラテン文字の26字に、é や ê などの記号つきの字を足して書く。問題はここからで、フランス語は書いてあるのに読まない文字がとても多い。語末の子音は、たいてい黙っている。
eau(水)は3文字で「オ」。oiseaux(鳥たち)は7文字で「ワゾー」。temps(時間)は「タン」、doigt(指)は「ドワ」。動詞も同じで、parle(彼は話す)と parlent(彼らは話す)は、綴りが違うのに発音はまったく同じだ。
理由は、綴りが1100〜1200年ごろの発音をもとにしていて、その後に発音だけが大きく変わったから。さらにあとの時代、語源のラテン語に合わせて文字を足した単語もある。temps は古くは tans、vingt(20)は vint と書いていた。読まない文字は、いわば昔の発音と語源の化石である。ê の屋根も同じで、forêt(森)のように、かつてそこにあった s が消えた印になっていることが多い。
文法のクセ
黙っている語末の子音は、次の単語が母音で始まると急に目を覚ます。これがリエゾンだ。deux(2)は単独なら「ドゥ」だが、deux ans(2年)は「ドゥザン」。読まないはずの x が、z の音で出てくる。
名詞にはすべて男性・女性の区別があり、形容詞もそれに合わせて形を変える。否定は動詞を ne と pas ではさむ。Je ne sais pas(私は知らない)のように、2語でひとつの「〜ない」になる。
数え方にもクセがある。フランスでは70を soixante-dix(60と10)、80を quatre-vingts(4つの20)、90を quatre-vingt-dix(4つの20と10)と言う。20をひとまとまりにする数え方の名残だ。ベルギーやスイスでは、70を septante、90を nonante と、すっきり言う。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
もとは、ローマ帝国が運んできたラテン語の話しことばだ。それが土地ごとに変わっていき、842年の「ストラスブールの誓い」で初めて文字に残る。王家の兄弟ふたりが同盟を誓ったとき、相手の兵士にもわかるよう、ラテン語ではなく土地のことばで誓った。これが現存する最古のフランス語の文章とされる。
1539年には国王フランソワ1世が「ヴィレル=コトレの勅令」で、裁判や公文書をラテン語ではなくフランス語で書くよう命じた。1635年には宰相リシュリューがアカデミー・フランセーズを作る。会員は40人で、「不滅の人びと」と呼ばれる。任務は辞書づくりで、初版は1694年。第9版は1992年に第1巻が出て、完結したのは2024年だ。
いま、この言語は
危機度は「安全」。話し手は2018年からの4年間で約2,100万人増えた。外国語として学ぶ人は約5,100万人で、その7割近くがアフリカにいる。伸びているのはヨーロッパの外だ。
いっぽうで、立場が変わりつつある国もある。西アフリカのニジェールは2025年、フランス語を公用語から外した。フランス語の重心は、フランスからアフリカへ移りながら、その中身も少しずつ変わっている。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
綴りは読まない文字だらけだが、でたらめではない。「eau は オ」「語末の子音はだいたい読まない」といった決まりを覚えれば、綴りから音はかなり正確に出せる。難しいのは逆向き、音から綴りを書くほうだ。
だから最初は、文字と音声をかならずセットで。国際放送 RFI の「Français facile」は、やさしいフランス語のニュースを音声と文章の両方で出している。鼻母音と r は、耳で覚えるのが近道だ。最初のひとことは「メルシ」でいい。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。