どこで、誰が話している?
話されているのはアメリカのハワイ州。1978年の州憲法で、英語と並ぶ州の公用語と定められている。アメリカの州で、英語以外の先住民の言語が公用語になっているのはここだけだ。
ただし人数は多くない。2016年ごろの推計で、家庭でハワイ語を使う人は約1万8千人。生まれたときからの母語話者となると、さらにずっと少ない。例外がニイハウ島で、ここはハワイ語が第一言語で、英語のほうが外国語という、世界で唯一の場所とされている。
どんな音がする?
音の数がとにかく少ない。子音は h・k・l・m・n・p・w と、のどをつめる音「ʻokina(オキナ)」の8つだけ。母音は a・i・u・e・o の5つで、それぞれに長い・短いの区別がある。世界の言語のなかでも、使う音がもっとも少ない部類に入る。
音が少ないぶん、単語は母音を並べて長くなる。ハワイ州の魚 humuhumunukunukuāpuaʻa(フムフムヌクヌクアープアア)は、その極端な例だ。子音が続かないので、日本語話者にはむしろ真似しやすい響きがある。
どんな文字で書く?
19世紀の初めまで、ハワイ語は文字を持たなかった。1826年、ハワイの知識人・タヒチ人・アメリカ人宣教師が話し合って、アルファベットを13文字に絞りこんだ。ひとつの音にひとつの文字、という原則で余分な字を落とした結果である。
この13文字のうち2つが、日本語には見慣れない記号だ。ひとつが ʻokina(ʻ)で、これは飾りではなくひとつの子音。もうひとつが kahakō(ā のような横棒)で、母音を長く伸ばす印。どちらも意味を左右する。
文法のクセ
語順は動詞が先。「子どもがポイを食べた」なら、食べた→子どもが→ポイを、の順に並ぶ。日本語ともまったく違うし、英語とも違う。
面白いのは「わたしたち」だ。ハワイ語の代名詞は単数・双数(2人)・複数を区別し、さらに「あなたを含む私たち」と「あなたを含まない私たち」を言い分ける。kāua は「あなたと私」、māua は「あの人と私(あなたは入らない)」。日本語だと文脈にまかせる部分が、単語の形として出てくる。
もうひとつが所有の2種類。koʻu と kaʻu はどちらも「わたしの」だが、自分で選んで手に入れたものか、生まれつき自分に属するものかで使い分ける。親や名前や体は、選んだものではない側に入る。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
文字を得たあと、ハワイ語は驚くほど広く読み書きされた。19世紀の王国時代には約100種類の新聞が発行され、残されたページは合計で約12万ページを超える。政治も歴史も伝承も、この言語で記録されていた。
転機は1896年。ハワイ王国が倒れた直後の「Act 57」という法律が、公立・私立を問わずすべての学校の教育言語を英語とすると定めた。学校からハワイ語が消え、話し手は減り続けた。この状態が90年続く。
いま、この言語は
1983年、母語話者がほぼ高齢者だけになった状況を前に、有志が「ʻAha Pūnana Leo(アハ・プーナナ・レオ)」を立ち上げ、翌1984年、ハワイ語だけで過ごす保育園を開いた。当時の話し手は約1,500人と見積もられていた。1986年に例の英語だけの法律が撤廃され、1987年からは公立のイマージョン校 Kula Kaiapuni が始まる。
いまでは保育園から博士課程まで、ハワイ語で学べる道がつながっている。ハワイ大学ヒロ校のハワイ語学部は、先住民言語の復興を主題にした博士号を出している数少ない機関だ。それでもユネスコの分類は「極めて深刻」のまま。世代をまたいで自然に受け渡される流れは、まだ細い。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
辞書はウェブで引ける。wehewehe.org(Hawaiian Dictionaries)は、プクイ=エルバートの辞書をはじめ複数の辞典をまとめて検索できる。19世紀の新聞そのものを読みたくなったら、Ulukau や Papakilo Database に画像とテキストが公開されている。
動画で始めるなら、ハワイ大学が公開している無料の24回シリーズ Kulāiwi がある。最初にやることは、ʻokina と kahakō を「読み飛ばさない」練習。この2つを無視すると、別の単語を言ってしまう。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。