ことばの図鑑 — ハワイ
ʻŌlelo Hawaiʻi

ハワイ語——子音8つ、母音5つ。消えかけて、戻ってきた

使える音がとても少ない。だから単語は長く、母音がずっと続く。一度は母語として育つ子どもがほとんどいなくなり、保育園からやり直した言語である。

2026-09-10 / 言語図鑑 編集部

どこで
アメリカ(ハワイ)
話し手
約2万人
系統
ポリネシア諸語
危機度
極めて深刻

どこで、誰が話している?

話されているのはアメリカのハワイ州。1978年の州憲法で、英語と並ぶ州の公用語と定められている。アメリカの州で、英語以外の先住民の言語が公用語になっているのはここだけだ。

ただし人数は多くない。2016年ごろの推計で、家庭でハワイ語を使う人は約1万8千人。生まれたときからの母語話者となると、さらにずっと少ない。例外がニイハウ島で、ここはハワイ語が第一言語で、英語のほうが外国語という、世界で唯一の場所とされている。

どんな音がする?

音の数がとにかく少ない。子音は h・k・l・m・n・p・w と、のどをつめる音「ʻokina(オキナ)」の8つだけ。母音は a・i・u・e・o の5つで、それぞれに長い・短いの区別がある。世界の言語のなかでも、使う音がもっとも少ない部類に入る。

音が少ないぶん、単語は母音を並べて長くなる。ハワイ州の魚 humuhumunukunukuāpuaʻa(フムフムヌクヌクアープアア)は、その極端な例だ。子音が続かないので、日本語話者にはむしろ真似しやすい響きがある。

どんな文字で書く?

19世紀の初めまで、ハワイ語は文字を持たなかった。1826年、ハワイの知識人・タヒチ人・アメリカ人宣教師が話し合って、アルファベットを13文字に絞りこんだ。ひとつの音にひとつの文字、という原則で余分な字を落とした結果である。

この13文字のうち2つが、日本語には見慣れない記号だ。ひとつが ʻokina(ʻ)で、これは飾りではなくひとつの子音。もうひとつが kahakō(ā のような横棒)で、母音を長く伸ばす印。どちらも意味を左右する。

pau は、ʻokina と kahakō の付け方しだいで「終わった」「しみ」「湿った」「スカート」に変わるハワイ大学 Hawaiian Language Online「Diacritics」より

文法のクセ

語順は動詞が先。「子どもがポイを食べた」なら、食べた→子どもが→ポイを、の順に並ぶ。日本語ともまったく違うし、英語とも違う。

面白いのは「わたしたち」だ。ハワイ語の代名詞は単数・双数(2人)・複数を区別し、さらに「あなたを含む私たち」と「あなたを含まない私たち」を言い分ける。kāua は「あなたと私」、māua は「あの人と私(あなたは入らない)」。日本語だと文脈にまかせる部分が、単語の形として出てくる。

もうひとつが所有の2種類。koʻukaʻu はどちらも「わたしの」だが、自分で選んで手に入れたものか、生まれつき自分に属するものかで使い分ける。親や名前や体は、選んだものではない側に入る。

この言語でしか言えない言葉

Kuleana
クレアナ
意味責任であり、同時に権利でもあるもの。土地や人との関わりから生まれる持ち場、と言ってもいい。「義務」と訳すと、進んで引き受けるという肝心の部分が落ちてしまう。
Kaona
カオナ
意味詩や歌にひそませた、表に出ていない意味。特定の人や場所をそれと名指さずに指し示す技法で、ハワイの歌はこれが幾重にも重なっているとされる。

歴史をひとことで

文字を得たあと、ハワイ語は驚くほど広く読み書きされた。19世紀の王国時代には約100種類の新聞が発行され、残されたページは合計で約12万ページを超える。政治も歴史も伝承も、この言語で記録されていた。

転機は1896年。ハワイ王国が倒れた直後の「Act 57」という法律が、公立・私立を問わずすべての学校の教育言語を英語とすると定めた。学校からハワイ語が消え、話し手は減り続けた。この状態が90年続く。

いま、この言語は

1983年、母語話者がほぼ高齢者だけになった状況を前に、有志が「ʻAha Pūnana Leo(アハ・プーナナ・レオ)」を立ち上げ、翌1984年、ハワイ語だけで過ごす保育園を開いた。当時の話し手は約1,500人と見積もられていた。1986年に例の英語だけの法律が撤廃され、1987年からは公立のイマージョン校 Kula Kaiapuni が始まる。

いまでは保育園から博士課程まで、ハワイ語で学べる道がつながっている。ハワイ大学ヒロ校のハワイ語学部は、先住民言語の復興を主題にした博士号を出している数少ない機関だ。それでもユネスコの分類は「極めて深刻」のまま。世代をまたいで自然に受け渡される流れは、まだ細い。

ことばカード

こんにちは
Aloha
アロハ
ありがとう
Mahalo
マハロ
またね
A hui hou
ア・フイ・ホウ
はい
ʻAe
アエ
いいえ
ʻAʻole
アオレ
ハワイ
Hawaiʻi
ハヴァイイ
1ʻekahi2ʻelua3ʻekolu4ʻehā5ʻelima

もし学ぶなら

おすすめの入り口

辞書はウェブで引ける。wehewehe.org(Hawaiian Dictionaries)は、プクイ=エルバートの辞書をはじめ複数の辞典をまとめて検索できる。19世紀の新聞そのものを読みたくなったら、Ulukau や Papakilo Database に画像とテキストが公開されている。

動画で始めるなら、ハワイ大学が公開している無料の24回シリーズ Kulāiwi がある。最初にやることは、ʻokina と kahakō を「読み飛ばさない」練習。この2つを無視すると、別の単語を言ってしまう。