どこで、誰が話している?
イタリア語を母語として話す人は約6,500万人。第二言語として使う人も合わせると、約8,500万人になる(2022年の推計)。イタリアのほか、サンマリノ、バチカン、スイスで公用語になっている。スイスでは南のティチーノ州などで話され、クロアチアやスロベニアの一部では少数言語として認められている。
ただ、イタリアの中でも、家ではずっと土地の「方言」を話してきた人が多い。イタリア統計局の2024年の調査では、家族とおもにイタリア語で話す人は約54%。方言をおもに使う人は約10%で、1988年の約32%から大きく減った。
どんな音がする?
母音は7つで、単語のほとんどが母音で終わる。だから歌うように、明るく響く。そしていちばんの特徴が二重子音だ。同じ子音を2つ書くと、その音を少し長く、ためて発音する。
caro(カーロ、大切な)と carro(カッロ、荷車)。anno(アンノ、年)の n を短くすると、別の意味になってしまう。日本語の「かこ」と「かっこ」の違いに近いので、日本語の話し手にはわりと聞き取りやすい。
どんな文字で書く?
ラテン文字で書くが、もともとのアルファベットは21文字しかない。j・k・w・x・y の5つは、weekend や jeans のような外来語や外国の名前にしか出てこない。
綴りと発音のずれがとても小さく、書いてあるとおりにほぼそのまま読める。二重子音も、聞こえたとおりに2つ書く。読まない文字だらけのフランス語とは、同じラテン語の子孫なのに対照的である。
文法のクセ
動詞の語尾で「だれが」がわかるので、主語をよく省く。「愛してる」は Ti amo(ティ・アーモ)。「私は」にあたる io は言わなくても、amo の -o が「私が」を表している。主語を言わないのは日本語と同じだが、イタリア語では動詞の形がその分を引き受けている。
名詞には男性・女性があり、ふつう男性は -o、女性は -a で終わる。複数になると -o は -i に、-a は -e に変わる。パスタの spaghetti が複数形なのはそのためで、1本なら spaghetto になる。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
ラテン語の話しことばが土地ごとに分かれ、イタリアの土地のことばがはじめて文書に残るのは960年代。南イタリアの修道院の土地争いで、証人のことばをそのまま書きとめた判決文(カプアの判決文など)だ。14世紀はじめ、ダンテが『神曲』をラテン語ではなくフィレンツェのことばで書いた。これが、のちの標準イタリア語の土台になる。
1583年にはフィレンツェでクルスカ学会が生まれ、1612年に最初のイタリア語辞典を出した。クルスカは「ふすま」。小麦粉からふすまをふるい分けるように、ことばを選り分けるという意味の名前だ。ルネサンスからバロックにかけて、主要な作曲家の多くがイタリア人だったので、forte(強く)、allegro(楽しげに、速く)、andante(歩くように)といった演奏の指示がイタリア語のまま世界に広まった。
いま、この言語は
危機度は「安全」。ただ、国としての統一は1861年なのに、そのとき標準イタリア語をきちんと話せたのは人口の約2.5%だけだったという推計がある(言語学者トゥッリオ・デ・マウロ)。国が先にでき、共通のことばはあとから広がった。
決め手のひとつがテレビだった。1954年に国営放送RAIのテレビ放送が始まり、1960年代には読み書きを教える番組『遅すぎることはない』も流れた。いま方言は減りつつあるが、親しい相手とは方言をまぜて話す人もまだ多い。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
綴りどおりに読めるので、日本語の話し手には入りやすい言語だ。母音はほぼ「アイウエオ」で、カタカナ読みでもかなり通じる。気をつけるのは二重子音の「ため」だけ。quattro(4)の tt を「クアットロ」と、小さい「ッ」で言えれば十分だ。
耳を慣らすなら、知っている曲の楽譜を開いて、イタリア語の指示を声に出してみるのもいい。音楽を習ったことがあれば、すでにいくつかの単語は知っているはずである。最初のひとことは「グラツィエ」で。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。