どこで、誰が話している?
コーンウォール語は、イギリスの南西のはし、大西洋に突き出た半島コーンウォールのことばだ。この言語で地名を言うと、コーンウォールは Kernow(ケルノウ)になる。
2021年の国勢調査で、おもな言語としてコーンウォール語を挙げた人は約560人。ただし国勢調査は「いちばんよく使う言語」をたずねるので、英語と並べて話せる人はもっと多い。2008年の調査では、ある程度話せる人を約2,000人と見積もっている。2002年には、イギリス政府が欧州地域・少数言語憲章のもとでこの言語を認めた。
どんな音がする?
ウェールズ語やブルトン語(フランス・ブルターニュ地方)と同じ、ブリトン諸語のなかまだ。なかでもブルトン語にとくに近いとされる。
16世紀ごろには、強く読む音節の nn や mm の前に、小さく d や b の音が入るようになった。「頭」はウェールズ語では pen なのに、コーンウォール語の後期の形では pedn(ペドゥン)になる。同じ根っこから、少しずつ別の音に育ったのだ。
どんな文字で書く?
文字はラテン文字だ。古い時代はウェールズ語・ブルトン語と共通の綴りを使い、のちに英語の書き方もまじった。中世には、いまは使われない文字ヨッホ(ȝ)も使っていた。
一度日常から消えたため、復興のあとで綴りが何通りも生まれた。いまは2008年に合意した標準書記形(SWF)が、学校や公的な場の共通の書き方になっている。
文法のクセ
ケルトの言語らしく、単語の頭の音が変わる。「猫」は kath なのに、「その猫」は an gath。「父」は tas なのに、「わたしの父」は ow thas になる。前に来る語によって、名詞の最初の子音がすり替わるのだ。
前置詞も人によって形を変える。gans(〜と)は、「わたしと」なら genev、「彼と」なら ganso だ。「さようなら」Dew genes や「元気?」Fatla genes? に出てくる genes も、この「〜と」が「あなたと」の形になったものだ。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
いちばん古い記録は9世紀、ラテン語の写本に書きこまれた語だ。12世紀には『ラテン語・コーンウォール語語彙集』がつくられ、14世紀末からは約8,700行の宗教劇『オーディナリア』が演じられた。
流れを変えたのは1549年だ。英語の祈祷書を全国で使わせる礼拝統一法が出され、反発した人びとが反乱を起こしたが、祈祷書がコーンウォール語に訳されることはなかった。教会から英語が広がり、ことばは西のはしへと追いこまれていく。1777年に亡くなったドリー・ペントリースが最後の流暢な話し手とされ、1891年に亡くなったジョン・デイヴィーが最後の母語話者だったという説もある。
いま、この言語は
復興は1904年、ヘンリー・ジェナーの『コーンウォール語の手引き』から始まった。1929年にはロバート・モートン・ナンスが中世の文献をもとにした綴りをまとめ、学ぶ人が少しずつ増えた。
ユネスコは2010年、それまでの「消滅」の扱いを改め、「極めて深刻」な危機言語に分類しなおした。2014年にはコーンウォールの人びとがイギリスの少数民族として認められた。2016年に国からの補助金は打ち切られ、いまはコーンウォール議会が支えている。小学校向けの無料プログラムには、26校・4,000人以上の子どもが参加している。
ことばカード
「さようなら」は Duw genes と書く資料もある。綴りが何通りもある言語なので、ここではコーンウォール議会の表記にそろえた。数字もその形だ。
もし学ぶなら
おすすめの入り口
まずは標準書記形(SWF)で書かれた教材を選ぶのが近道だ。コーンウォール議会の学習ページや、オンラインの辞書が入り口になる。ウェールズ語やブルトン語を少し知っていれば、似た単語があちこちで見つかるはずだ。
コーンウォールを旅するなら、地図の地名を Tre・Pol・Pen で読んでみるといい。一度は消えたと言われたことばが、看板のなかでずっと待っていたことに気づく。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。