ことばKOTOBA
ことばの図鑑 — ラトビア
Latviešu valoda

ラトビア語——約21万8,000の歌を、たんすにしまった言語

リトアニア語とならんで、国の公用語になったバルトのことば。4行の民謡「ダイナ」を書いた紙が、73の引き出しを持つたんすに収められている。

2026-10-28 / 言語と物語の図鑑 編集部

どこで
ラトビア
話し手
約150万人
系統
インド・ヨーロッパ語族 バルト語派
危機度
安全

どこで、誰が話している?

ラトビア語は、バルト海の東の岸、エストニアとリトアニアにはさまれたラトビアの公用語である。母語にする人は国内に約150万人いて、国の外にも約10万人が暮らしている。

ラトビアがEUに加わってからは、EUの公用語のひとつにもなった。国の中では1999年に定められた「国家言語法」が、ラトビア語を国のことばとして位置づけている。

どんな音がする?

アクセントは、ほぼ決まって単語の最初の音節に来る。母音は6つで、それぞれに短い音と長い音があり、長さで意味が変わる。日本語の「おばさん」と「おばあさん」のような区別を、ふだんの会話でたくさん使う言語なのだ。

長い母音や二重母音には、さらに音の調子(イントネーション)がつく。多くの方言では「のばす」調子と「途中で切れる」調子の2種類があり、ヴィゼメ地方の一部では3種類を言い分ける。r は舌を震わせる巻き舌で発音する。

どんな文字で書く?

文字はラテン文字で、標準の綴りは33文字。ふつうのラテン文字22字に、11字の記号つきの文字を足している。長い母音には上に横棒をのせて ā・ē・ī・ū と書き、č・š・ž、それに下にコンマをつけた ģ・ķ・ļ・ņ がある。q・w・x・y は使わない。

いまの綴りの基本は、1908年に言語学者のミーレンバフスとエンゼリーンスがまとめたものだ。その後も少しずつ整理され、1957年には ch が外された。

Labrīt! Paldies.「おはよう! ありがとう。」

文法のクセ

名詞は7つの格で形を変え、性は男性と女性の2つ。英語の the や a にあたる冠詞はない。代わりに形容詞の語尾で言い分け、vecu māju なら「ある古い家を」、veco māju なら「その古い家を」になる。

おもしろいのは、「〜しなければならない」専用の動詞の形があることだ。動詞の頭に jā- をつけ、する人は「〜に」の形で言う。man ir jāmācās は、直訳すると「わたしに、学ぶことがある」、つまり「わたしは勉強しなければならない」になる。人から聞いた話を伝えるための、-ot で終わる動詞の形もある。

この言語でしか言えない言葉

daina
ダイナ
意味ラトビアの民謡。ふつうは4行ほどのとても短い歌で、約95%が「強・弱」をくり返すリズムで作られている。民俗学者クリシュヤーニス・バロンスは集めた歌を細長い紙に書きとめ、1880年に作らせたたんす「ダイヌ・スカピス(民謡のたんす)」に収めた。たんすは高さ約160cmで引き出しが73あり、2001年にユネスコの「世界の記憶」に登録された。書き集められた民謡の数は、約21万8,000にのぼる。
līgo
リーゴ
意味夏至祭ヤーニ(Jāņi)の歌でくり返されるかけ声で、6月23日の祭りの前夜は「リーゴの日」と呼ばれる。名詞ではなく動詞か間投詞のような語で、もとは歌のくり返し部分だったという説や、神の名から来たという説がある。この夜、男性はオークの葉の冠、女性は花や草の冠をかぶり、朝まで火をたく。

歴史をひとことで

ラトビア語はインド・ヨーロッパ語族のバルト語派に属する。同じ仲間だった古プロイセン語などはすでに話されなくなり、いま国の公用語として使われているバルト語派の言語は、ラトビア語とリトアニア語の2つだけだ。

書かれたものでいちばん古いのは1530年の賛美歌の翻訳で、現存する最古の本は1585年のカトリックの教理問答である。1685年には新約聖書、1691年には旧約聖書の翻訳がそろった。長い歴史のなかで、ドイツ語やスウェーデン語、北どなりのリヴォニア語などから多くの語が入ってきた。

いま、この言語は

国の公用語として、学校・役所・メディアで使われ、言語として安定している。国の東部ラトガレ地方には、独自の書きことばを持つラトガレ語がある。ラトビア語とは話が通じるが、方言とみるか別の言語とみるかは意見が分かれている。

ことばカード

こんにちは
Sveiki
スヴェイキ
おはよう
Labrīt
ラブリート
ありがとう
Paldies
パルディエス
さようなら
Uz redzēšanos
ウズ・レヅェーシャノス
はい
Jā
ヤー
いいえ
Nē
ネー
1viens2divi3trīs4četri5pieci

もし学ぶなら

おすすめの入り口

綴りはほぼ読んだとおりで、アクセントも最初の音節と決まっている。長音記号のついた ā・ē・ī・ū を「のばす」と覚えれば、すぐに声に出して読める。まずは Sveiki(こんにちは)と Paldies(ありがとう)から。

手ごわいのは7つの格と、形容詞の2通りの語尾だ。歌から入るのもいい。ダイナは4行ほどと短いので、ひとつ覚えるだけでリズムと単語がいっしょに身につく。