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ことばの図鑑 — マダガスカル
Malagasy

マダガスカル語——アフリカの島で話す、東南アジア生まれの言語

アフリカのすぐそばの島で話されているのに、親戚は海の向こうのボルネオ島にいる。インド洋を渡ってきた言語の話をしよう。

2026-10-21 / 言語と物語の図鑑 編集部

どこで
マダガスカル
話し手
約2,500万人
系統
オーストロネシア語族
危機度
安全

どこで、誰が話している?

マダガスカル語は、アフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶ島国マダガスカルのことばである。話し手は約2,500万人。2010年の憲法で、フランス語とならぶ公用語と定められている。となりのフランス領マヨット島でも、マダガスカル語の方言「キブシ」が話されている。

島の中にはいくつもの方言があり、標準語のもとになったのは、首都アンタナナリボのある中央高地のメリナ方言だ。役所や放送で使われるのも、この標準マダガスカル語である。

どんな音がする?

「ありがとう」は Misaotra(ミサオチャ)。アクセントはふつう後ろから2番めの音節にあり、そのあとの母音は弱く、かすれるように発音される。だから、書いた文字のわりに、耳には短く聞こえる単語が多い。

綴りと音のずれにも慣れが要る。文字の o は「ウ」に近い音で読み、「オ」の音は ô や ao、oa と書く。「さようなら」の Veloma は、ヴェルマに近く聞こえる。

どんな文字で書く?

いまはラテン文字で書く。アルファベットは21文字で、c・q・u・w・x は外来語にしか出てこない。同じ「イ」の音でも、単語の終わりは y、それ以外は i と書き分けるのが決まりだ。

ラテン文字になったのは1823年、メリナ王国のラダマ1世が、宣教師デイヴィッド・ジョーンズのつくった綴り方を選んだときである。それより前には、アラビア文字をもとにしたソラベという文字があり、島の南東部で15世紀ごろから使われていた。残っている写本の多くは、まじないや一族の由来を記したものだ。

Mamaky boky ny mpianatra.ママキ・ブキ・ニ・ムピアナチャ。「読む・本を・その・生徒が」=生徒が本を読む

文法のクセ

上の文のとおり、語順は動詞・目的語・主語。「読む、本を、生徒が」と、主語がいちばん最後に来る。世界の言語の中でも、この並びはかなり少数派だ。

時制は、動詞の頭の1文字で切り替える。「買う」は mividy、「買った」は nividy、「買うだろう」は hividy。m が n になると過去、h になると未来である。また「わたしたち」には、話し相手を含む isika と、含まない izahay の2つがある。

この言語でしか言えない言葉

fihavanana
フィハヴァナナ
意味「親族」を表す havana から生まれたことば。家族のような親しさ、助け合い、争わずに和を保つ心——そのすべてをまとめて指す。家族から近所、村、さらには祖先とのつながりにまで広がる考え方で、英語にもぴったりの訳語がない。マダガスカルの暮らしの真ん中にある価値とされる。

歴史をひとことで

アフリカのすぐそばの島なのに、マダガスカル語はアフリカの言語ではない。オーストロネシア語族に属し、いちばん近い親戚は、遠く東南アジアのボルネオ島で話されるマアニャン語である。この近さを確かめたのは、ノルウェーの言語学者オットー・ダールで、1951年の研究だった。

東南アジアから海を渡った人びとが島に住みはじめたのは、5世紀ごろ、あるいは7〜13世紀ごろと考えられ、年代には説の幅がある。その後、およそ1000年ごろからアフリカのバントゥー系の人びとやアラブの人びとと交わり、ことばにもバントゥー諸語やアラビア語の単語が入った。近代にはフランス語からも多くを借りている。

いま、この言語は

話し手は多く、島じゅうで日常的に使われている。消える心配のある言語ではない。一方で、学校や仕事の場ではフランス語の存在も大きく、2つの公用語がどう役割を分けあうかは、この国でくり返し話しあわれてきたテーマだ。インド洋を越えてきたことばは、いまもアフリカの島で、いちばん身近な声として生きている。

ことばカード

こんにちは
Salama
サラマ
ありがとう
Misaotra
ミサオチャ
さようなら
Veloma
ヴェルマ
はい
Eny
エニ
いいえ
Tsia
ツィア
1iray2roa3telo4efatra5dimy

もし学ぶなら

おすすめの入り口

文字はラテン文字で21字だけなので、読み方の決まりを覚えれば早い段階で声に出せる。まずは「o はウ」「最後の y はイ」の2つを押さえ、Misaotra や Veloma をくり返してみよう。

文法では、動詞が先、主語が最後という語順に耳を慣らすのが近道だ。mividy/nividy/hividy のように、頭の1文字で時が変わる動詞をいくつか並べて覚えると、文の組み立てが見えてくる。