どこで、誰が話している?
ビルマ語はミャンマーの公用語だ。母語として話す人は約3,300万人、第二言語として使う人を合わせると約4,300万人になる(2019年の推計)。ミャンマーには100を超える民族が暮らしていて、シャン語やカレン語、モン語などを母語とする人も、学校や役所ではビルマ語を使う。国の共通語の役目も担っているわけだ。
系統はシナ・チベット語族のチベット・ビルマ語派で、チベット語とは遠い親戚にあたる。英語では長く「Burmese」と呼ばれてきたが、1989年に国の英語名がビルマからミャンマーに変わり、憲法では「Myanmar language」と書かれている。
どんな音がする?
ビルマ語には4つの声調がある。低く平らな「低」、高い「高」、喉をきゅっと締めて短く出す「きしみ」、そして音の最後を喉で止める「詰まり」。声の高さだけでなく、喉の締め方まで単語の区別に使うのがビルマ語らしいところだ。
数字を数えるだけでも、それが聞こえる。1は「ティッ」、2は「ニッ」と、どちらも喉でぴたっと止める。3の「トウン」、4の「レー」、5の「ンガー」は、高く伸ばす音だ。5の頭の「ンガ」のように、日本語にはない「ng」で始まる音もよく出てくる。
どんな文字で書く?
ビルマ文字は、子音字に母音の記号をつけて書くタイプの文字で、子音字は33ある。さかのぼるとインドのブラーフミー系の文字に行き着き、ピュー文字や古いモン文字を経て伝わったと考えられている。
見た目のいちばんの特徴は、丸いことだ。昔はヤシの葉に尖った道具で字を刻んでいて、まっすぐな線を引くと葉が裂けてしまう。そのため円を組み合わせた形が好まれ、のちに折りたたみ式の紙の本でも丸い書き方が受け継がれた。単語のあいだに空白は入れず、いまは句の切れ目に空白を置くことが多い。
文法のクセ
語順は「主語・目的語・動詞」で、日本語と同じだ。「〜を」にあたる語を名詞のうしろにつけ、動詞の後ろに時や丁寧さを表す語を重ねていく。日本語話者には組み立てが追いやすい。
ものを数えることばもある。人なら「ヨウッ」、動物なら「カウン」、丸いものなら「ロウン」、平たいものなら「ピャー」。お坊さんには専用の数え方があるほどだ。もうひとつのクセは、書き言葉と話し言葉がはっきり分かれていること。同じ「〜の」でも、本や新聞では ၏、会話では ရဲ့ を使う。学校では書き言葉を習い、ふだんは話し言葉で暮らす。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
ビルマ語を話す人びとは、北から川沿いに南へ移ってきて、9世紀ごろからバガンを中心に国を築いた。ビルマ文字のいちばん古い確かな記録は1035年のものとされる。
よく知られるのが1113年のミャゼーディー碑文だ。ひとつの内容を古ビルマ語・パーリ語・古モン語・ピュー語の4つの言語で刻んだ石柱で、いまでは消えたピュー語を読み解く鍵になった。ユネスコの「世界の記憶」にも登録されている。仏教とともにパーリ語から多くの語が入り、19世紀以降の英国統治の時代には英語からの借用も増えた。
いま、この言語は
危機度は「安全」。行政・教育・放送・出版がビルマ語で動いている。ただ、デジタルの世界では少し変わった苦労があった。国際規格の Unicode とは違う独自の文字コード「ゾージー(Zawgyi)」が広く使われ、同じ文字が端末によって化けてしまう状態が長く続いたのだ。
政府は2019年4月までに省庁を Unicode に移し、2019年10月1日を「U-Day」として国全体の切り替えを呼びかけた。移行には数年かかると見られ、いまもときどき古い文字コードで書かれたページに出会うことがある。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
NHK WORLD-JAPAN にはビルマ語のサービスがあり、日本のニュースや暮らしの話題をビルマ語で読んだり聴いたりできる。中身を知っている話題から入ると、空白の少ない丸い文字の並びでも単語をつかみやすい。
最初の山は、丸い文字の見分けと、喉で止める・締める声調。いっぽうで語順は日本語と同じで、数えることばもある。まずは「ミンガラーバー」と、ていねいな「チェーズーティンバーデー」を、喉の止めごと真似するところから始めたい。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。