ことばKOTOBA
ことばの図鑑 — ミャンマー
မြန်မာဘာသာ

ビルマ語——丸い文字で書く、声調のことば

ほとんどの字が丸でできている。ヤシの葉に尖った筆で刻むとき、まっすぐな線は葉を裂いてしまうからだという。ミャンマーのことばは、声の高さと、喉の締め方で単語を分ける。

2026-10-13 / 言語と物語の図鑑 編集部

どこで
ミャンマー
話し手
約4,300万人(第二言語を含む)
系統
シナ・チベット語族
危機度
安全

どこで、誰が話している?

ビルマ語はミャンマーの公用語だ。母語として話す人は約3,300万人、第二言語として使う人を合わせると約4,300万人になる(2019年の推計)。ミャンマーには100を超える民族が暮らしていて、シャン語やカレン語、モン語などを母語とする人も、学校や役所ではビルマ語を使う。国の共通語の役目も担っているわけだ。

系統はシナ・チベット語族のチベット・ビルマ語派で、チベット語とは遠い親戚にあたる。英語では長く「Burmese」と呼ばれてきたが、1989年に国の英語名がビルマからミャンマーに変わり、憲法では「Myanmar language」と書かれている。

どんな音がする?

ビルマ語には4つの声調がある。低く平らな「低」、高い「高」、喉をきゅっと締めて短く出す「きしみ」、そして音の最後を喉で止める「詰まり」。声の高さだけでなく、喉の締め方まで単語の区別に使うのがビルマ語らしいところだ。

数字を数えるだけでも、それが聞こえる。1は「ティッ」、2は「ニッ」と、どちらも喉でぴたっと止める。3の「トウン」、4の「レー」、5の「ンガー」は、高く伸ばす音だ。5の頭の「ンガ」のように、日本語にはない「ng」で始まる音もよく出てくる。

どんな文字で書く?

ビルマ文字は、子音字に母音の記号をつけて書くタイプの文字で、子音字は33ある。さかのぼるとインドのブラーフミー系の文字に行き着き、ピュー文字や古いモン文字を経て伝わったと考えられている。

見た目のいちばんの特徴は、丸いことだ。昔はヤシの葉に尖った道具で字を刻んでいて、まっすぐな線を引くと葉が裂けてしまう。そのため円を組み合わせた形が好まれ、のちに折りたたみ式の紙の本でも丸い書き方が受け継がれた。単語のあいだに空白は入れず、いまは句の切れ目に空白を置くことが多い。

မြန်မာစာ「ミャンマー・サー」。ビルマ語の文字・書き言葉のこと。丸の上にかぶさる線や、下にぶら下がる記号で音が決まる

文法のクセ

語順は「主語・目的語・動詞」で、日本語と同じだ。「〜を」にあたる語を名詞のうしろにつけ、動詞の後ろに時や丁寧さを表す語を重ねていく。日本語話者には組み立てが追いやすい。

ものを数えることばもある。人なら「ヨウッ」、動物なら「カウン」、丸いものなら「ロウン」、平たいものなら「ピャー」。お坊さんには専用の数え方があるほどだ。もうひとつのクセは、書き言葉と話し言葉がはっきり分かれていること。同じ「〜の」でも、本や新聞では ၏、会話では ရဲ့ を使う。学校では書き言葉を習い、ふだんは話し言葉で暮らす。

この言語でしか言えない言葉

အားနာ
アーナー(アーナーデ)
意味相手を困らせたり、気まずくさせたり、負担をかけたりしたくなくて、自分の言いたいことを控える気持ち。「何が食べたい?」と聞かれて「なんでもいい」と答えるのは、このアーナーのせいだと説明されることが多い。タイ語の「クレンジャイ」、日本語の「遠慮」とよく比べられる、ミャンマーの暮らしの土台にある感覚だ。
မင်္ဂလာပါ
ミンガラーバー
意味ミャンマーの「こんにちは」。もとはパーリ語の「マンガラ(吉祥・めでたさ)」に、ていねいさを足す「バー」がついた形で、「あなたにめでたさを」といった意味になる。英国統治の時代に「ハロー」にあたる語として生まれた比較的新しい挨拶で、1960年代後半に学校教育に取り入れられ、いまは子どもたちが毎朝これで先生に挨拶する。

歴史をひとことで

ビルマ語を話す人びとは、北から川沿いに南へ移ってきて、9世紀ごろからバガンを中心に国を築いた。ビルマ文字のいちばん古い確かな記録は1035年のものとされる。

よく知られるのが1113年のミャゼーディー碑文だ。ひとつの内容を古ビルマ語・パーリ語・古モン語・ピュー語の4つの言語で刻んだ石柱で、いまでは消えたピュー語を読み解く鍵になった。ユネスコの「世界の記憶」にも登録されている。仏教とともにパーリ語から多くの語が入り、19世紀以降の英国統治の時代には英語からの借用も増えた。

いま、この言語は

危機度は「安全」。行政・教育・放送・出版がビルマ語で動いている。ただ、デジタルの世界では少し変わった苦労があった。国際規格の Unicode とは違う独自の文字コード「ゾージー(Zawgyi)」が広く使われ、同じ文字が端末によって化けてしまう状態が長く続いたのだ。

政府は2019年4月までに省庁を Unicode に移し、2019年10月1日を「U-Day」として国全体の切り替えを呼びかけた。移行には数年かかると見られ、いまもときどき古い文字コードで書かれたページに出会うことがある。

ことばカード

こんにちは
မင်္ဂလာပါ
ミンガラーバー
ありがとう
ကျေးဇူးတင်ပါတယ်
チェーズーティンバーデー
そろそろ行くね(さようなら)
သွားတော့မယ်
トゥワードーメー
はい
ဟုတ်ကဲ့
ホウッケ
いいえ(ちがいます)
မဟုတ်ဘူး
マホウッブー
ミャンマー
မြန်မာ
ミャンマー
1တစ်2နှစ်3သုံး4လေး5ငါး

もし学ぶなら

おすすめの入り口

NHK WORLD-JAPAN にはビルマ語のサービスがあり、日本のニュースや暮らしの話題をビルマ語で読んだり聴いたりできる。中身を知っている話題から入ると、空白の少ない丸い文字の並びでも単語をつかみやすい。

最初の山は、丸い文字の見分けと、喉で止める・締める声調。いっぽうで語順は日本語と同じで、数えることばもある。まずは「ミンガラーバー」と、ていねいな「チェーズーティンバーデー」を、喉の止めごと真似するところから始めたい。