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ことばの図鑑 — ノルウェー
Norsk

ノルウェー語——書き言葉が2つある国

「私」は jeg とも eg とも書く。デンマークの書き方を直した道と、方言から組み立てた道。ひとつの国に、公式の書き言葉が2つ並んでいる。

2026-10-07 / 言語と物語の図鑑 編集部

どこで
ノルウェー
話し手
約430万人
系統
ゲルマン語派
危機度
安全

どこで、誰が話している?

ノルウェー語は、ノルウェーの公用語だ。母語の話し手は約430万人(2012年の推計)。北欧理事会の作業言語のひとつでもある。系統はインド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派の北ゲルマン語で、スウェーデン語・デンマーク語とは、それぞれが自分のことばのままでもかなり通じ合う。

この言語のいちばんの特徴は、公式の書き言葉が2つあることだ。ひとつはブークモール(Bokmål、「本のことば」)、もうひとつはニーノシュク(Nynorsk、「新しいノルウェー語」)。2005年の調査では、ふだんブークモールで書く人が約86%、ニーノシュクで書く人が約7.5%だった。ニーノシュクは西部の農村に強く、ローガラン、ヴェストラン、ムーレ・オ・ロムスダールの農村部では約90%がこちらで書くとされる。

どんな音がする?

となりのスウェーデン語と同じく、ノルウェー語にも2種類の高さのアクセントがある。強く読む音節の音の上がり下がりの形が、単語によって違うのだ。よく出される例が bønder(農民たち)と bønner(豆、または祈り)。綴りはひと文字違うだけで音はほぼ同じだが、前者は単純な「声調1」、後者はより複雑な「声調2」で読む。

もうひとつ面白いのは、「標準の話し方」が公式には決められていないことだ。ほとんどの人が、職場でもテレビでも、自分の地方の方言で話す。どの方言で話しても、正しいノルウェー語として受け入れられる。

どんな文字で書く?

ラテン文字の26字に、æ・ø・å の3字を足した29字。この3つは z のあとに並ぶ独立した文字だ。c・q・w・x・z は、ほぼ外来語でしか使わない。

2つの書き言葉の違いは、たとえば「私」だ。ブークモールでは jeg、ニーノシュクでは eg と書く。同じ文でも、どちらで書くかで見た目が変わる。

Jeg er norsk / Eg er norsk「私はノルウェー人だ」。上がブークモール、下がニーノシュク

文法のクセ

北欧の仲間たちと同じく、「その」にあたる定冠詞は前に置かず、単語のおしりにくっつける。bil(車)は bilen で「その車」、hus(家)は huset で「その家」になる。

語順は、ふつうの文で動詞がかならず2番目に来る「V2」。「今日」を文の頭に出すと、動詞がすぐあとに来て、主語は後ろへ回る。動詞は人称で形が変わらないので、「私は」「あなたは」「彼は」のどれでも同じ形でいい。

この言語でしか言えない言葉

Friluftsliv
フリールフツリーヴ
意味文字どおりには「開かれた空気の中の暮らし」。山や森、海辺で過ごし、自然の中に身を置くことそのものを指す。ことばとして広まったきっかけは、劇作家イプセンが1859年に発表した詩「高原にて(På vidderne)」だとされる。ノルウェーには、他人の土地でも自然の中なら歩いて通れる「万人の権利(allemannsretten)」があり、このことばはそうした暮らし方と結びついている。

歴史をひとことで

もとはバイキングの時代の古ノルド語だ。ところが1397年、ノルウェーはデンマークとの連合に入り、それが1814年まで続いた。この約400年のあいだ、書き言葉はほぼデンマーク語になった。

独立の機運のなかで、2つの道が生まれた。ひとつは、使い慣れたデンマーク語の書き方を少しずつノルウェー風に直していく道。これが「リクスモール」を経て、いまのブークモールになった。もうひとつは、方言を歩いて集め、そこから新しい書き言葉を組み立てる道だ。言語学者イーヴァル・オーセンが1848年に文法書、1850年に辞書を出し、「ランスモール」を作った。これがニーノシュクの祖先である。

1885年5月12日、国会は2つを公式で対等なものと決めた。1929年に名前がブークモールとニーノシュクに改まり、20世紀には2つを1つに寄せる「サムノシュク(統一ノルウェー語)」の方針もとられたが、これは2002年に正式に取り下げられた。

いま、この言語は

危機度は「安全」。2022年1月1日に施行された言語法は、ノルウェー語を国の主要言語とし、ブークモールとニーノシュクを公的機関で対等な書き言葉と定めた。国の機関は、公開する文書でそれぞれ少なくとも25%を使うことが求められる。国営放送NRKにも、ニーノシュクのコンテンツを少なくとも25%にする決まりがある。

学校では、自分の書き言葉でないほうも必修で学ぶ。2020年時点で、ニーノシュクを公式に選んだ自治体は90、ブークモールは118、どちらとも決めていない「中立」が148。この割合は1970年代からあまり動いていないという。

ことばカード

こんにちは
Hei
ハイ
ありがとう
Takk
タック
さようなら
Ha det
ハーデ
はい
Ja
ヤー
いいえ
Nei
ナイ
ノルウェー
Norge
ノルゲ
1en2to3tre4fire5fem

もし学ぶなら

おすすめの入り口

まずはブークモールから始めるのが一般的だ。書く人がいちばん多く、教材も多い。英語を知っていれば似た単語にたくさん出会えるし、動詞が人称で変わらないので、文法の入り口はやさしいほうだ。

山は聞き取りだ。人によって話す方言が違うので、ひとつの音声だけでなく、いろいろな地方の話し方に耳を慣らしたい。最初のひとことは、短くて使い勝手のいい「タック」から。