どこで、誰が話している?
沖縄語は、沖縄本島の中部と南部、そして周りの島々で話されてきたことばだ。地元では「ウチナーグチ」(沖縄の口=ことば)と呼ばれる。本島北部は国頭語(くにがみご)、宮古・八重山・与那国にはそれぞれ別の言語があり、奄美語も含めて琉球諸語というひとつのグループをつくっている。
長いあいだ「沖縄方言」と呼ばれてきた。けれど2009年、ユネスコは日本の消滅危機言語として8つを挙げ、そのなかに沖縄語を独立した言語として数えた。日本語とは同じ祖先から分かれた兄弟のような関係で、単語の約7割は日本語と語源が共通するとされる。それでも、標準語しか知らない人が会話を聞いて理解するのは難しい。
話し手の数は、数え方によって大きく変わる。県内の人口を含めて約100万人とする資料もあれば、母語として話す人を約10万人とする推計もある。確かなのは、日常的に話す人の多くが高齢の世代だということだ。
どんな音がする?
日本語と見比べると、決まった音の置き換えがある。日本語のオ段は u に、エ段は i になりやすい。「心(こころ)」はククル、「肝(きも)」はチム。「沖縄」が「ウチナー」になるのも、キがチに変わる同じ流れの一部だ。
もうひとつの特徴は、のどを一瞬閉じる声門閉鎖音だ。母音で始まる単語の多くは、この小さな「詰まり」をつけて発音する。日本語にはない区別で、あるなしで意味が変わる単語もある。
どんな文字で書く?
沖縄語は、日本語と同じかなと漢字で書かれてきた。1501年に建てられた王家の墓・玉陵(たまうどぅん)の碑には、ひらがなと漢字を交ぜた文がすでに刻まれている。
いちばん大切な記録は、王府がまとめた歌謡集『おもろさうし』だ。1531年から1623年にかけて3回に分けて編まれ、全22巻・1,554首。ほとんどがひらがなで書かれ、祭りの歌や航海、王をたたえる歌が並ぶ。
ただ、日本語のかなだけでは沖縄語の音をうまく書き分けられない。「てぃ」「とぅ」のような小書きを使い、書き方もいくつかの流儀がある。沖縄県は2022年に表記の目安をまとめている。
文法のクセ
語順は日本語と同じく主語・目的語・動詞で、助詞もある。日本語の話し手には入りやすい骨組みだ。そのかわり、動詞の形や語尾は大きく違い、骨組みが似ているぶん、中身の違いに驚かされる。
あいさつが話し手の性別で変わるのもおもしろい。「こんにちは」は、男性ならはいさい、女性ならはいたいと言う。
数え方にも古い形が残っている。1から5はてぃーち・たーち・みーち・ゆーち・いちち。日本語の「ひとつ・ふたつ」にあたる数え方で、ものの種類を問わずに使える。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
沖縄語は、琉球王国の都・首里で使われた王府のことばだった。とくに尚真王の時代(1477〜1526年)には、王国の公のことばとして使われた。
1609年に薩摩藩が琉球に侵攻すると、公文書には漢字が多く求められるようになる。そして1879年、琉球は日本に組み込まれて沖縄県となり、学校では日本語で教えることになった。学校で沖縄のことばを話した子どもは、木の札を首にかけられた。方言札と呼ばれ、外すには、ほかに方言を話す子を見つけて渡すしかなかった。こうして、ことばは家庭の外から少しずつ消えていった。
いま、この言語は
ユネスコの分類では、沖縄語は「危険」な状態にある。沖縄県が2025年に行った調査では、しまくとぅば(県内の島々のことばの総称)を「主に使う」と答えた人は約3%、「挨拶程度」まで含めても約4割だった。一方で、聞いて「ある程度わかる」までを合わせると約7割。わかるけれど、話さない世代が広がっている。
県は2006年に条例で9月18日を「しまくとぅばの日」と定めた。く(9)・とぅ(10)・ば(8)の語呂合わせだ。県は小中学生向けの『しまくとぅば読本』もつくり、地域ごとのことばを学べるようにしている。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
まずは沖縄県が公開している『しまくとぅば読本』。那覇・名護・宮古・石垣・与那国のことばが並んでいて、同じ県のなかでもことばがどれほど違うかがわかる。
次は「はいさい/はいたい」と「にふぇーでーびる」を口にしてみること。日本語の o を u に、e を i に置き換えるルールを覚えると、知らない単語でも元の日本語が透けて見えてくる。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。