どこで、誰が話している?
ポーランド語はポーランドの公用語で、母語として話す人は約4,000万人、第二言語の話し手を合わせると約4,300万人になる。EUの言語の中では6番目に話し手が多い。
国の外にも話し手は多い。リトアニアやベラルーシ、ウクライナには昔から暮らすポーランド系の人びとがいて、イギリスやアメリカ、ドイツなどにも移住した人たちの大きなコミュニティがある。チェコ語やスロバキア語と同じ西スラヴ語のなかまだ。
どんな音がする?
まず耳に残るのは「シュ」「チ」「ジ」のような、こすれる音の多さだ。似た音が何種類もあり、舌を反らせる「シュ」(sz)と、舌の前をもち上げる柔らかい「シ」(ś)を別の音として区別する。
そして子音が続く。単語の頭や途中に、子音が最大4つ並ぶことがある。それを楽しむのが有名な早口ことばだ。
一方で、アクセントはわかりやすい。ほとんどの単語で後ろから2番目の音節を強く読む。
どんな文字で書く?
ポーランド語はラテン文字で書く。アルファベットは32文字で、そのうち9つは記号つきの文字(ą ć ę ł ń ó ś ź ż)だ。逆に q・v・x は、ふつうは使わない。ą と ę は鼻にかかる母音を表す。
子音がずらりと並んで見えるのは、2文字で1つの音を表す綴りが多いからでもある。sz は「シュ」、cz は「チュ」、rz は「ジュ」に近い音で、szcz は「シュチ」の2音にすぎない。決まりを覚えれば、綴りからほぼそのとおりに読める。
おもしろいのが ł だ。もとは暗い「ル」の音だったが、16世紀ごろから庶民のあいだで英語の w に近い「ウ」の音に変わり、20世紀半ばにはそれがふつうになった。いまも東部や国外のポーランド系の人びとのあいだには、古い「ル」の発音が残っている。
文法のクセ
名詞には7つの格がある。主格・属格・与格・対格・具格・前置格、そして呼びかけ専用の呼格だ。名前で呼びかけるとき、語尾が変わる。
性は男性・女性・中性の3つ。さらに男性名詞は「人」「動物」「もの」の3種類に分かれ、とくに「男性の人を含む複数」かどうかで、形容詞や動詞の過去形の形が変わる。
主語の代名詞はよく省略する。ていねいに話すときは「あなた」を使わず、Pan(男性に)/Pani(女性に)という名詞を主語にして、動詞は3人称で話す。「あの方はお元気ですか」と言うような話し方である。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
ポーランド語で書かれた最初の文として知られるのが、シロンスク地方の修道院の記録『ヘンリクフの書』にある一文だ。1270年の項に、石臼をひく妻をいたわった夫のことばとして「Day, ut ia pobrusa, a ti poziwai(わたしがひこう、おまえは休め)」と書き留められた。この本は2015年、ユネスコの世界の記憶に登録された。
18世紀の終わり、ロシア・プロイセン・オーストリアによる3度の分割(1772年・1793年・1795年)で、ポーランドは地図から消えた。ロシア領とプロイセン領では学校がロシア語化・ドイツ語化され、ポーランド語は押しのけられた。それでも家庭や教会、文学の中でことばは受け継がれ、1918年、123年ぶりに独立を取り戻した。
いま、この言語は
危機とは無縁の大言語で、国内ではほぼ全員が母語として話す。2004年のEU加盟後は、イギリスやアイルランドなどへ働きに出る人が増え、ヨーロッパの街角でポーランド語を耳にする機会が一気に増えた。
文学の層も厚い。ノーベル文学賞の受賞者を何人も出しており、近年では2018年の賞をオルガ・トカルチュクが受けている。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
最初に綴りと音の対応を覚えること。sz・cz・rz・ś・ć・ź・ż の違いさえ押さえれば、長い単語も迷わず声に出せる。アクセントは後ろから2番目、と決めて読めばほぼ外れない。
文法は格変化が山場だが、まずは呼格から試すと楽しい。友だちの名前を呼ぶとき、語尾がどう変わるかを聞き取ってみるといい。仕上げに、あの早口ことばを一息で言えるか挑戦してみよう。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。