どこで、誰が話している?
ソマリ語は、アフリカ大陸の東の端、「アフリカの角」と呼ばれる地域のことばである。話し手は約2,400万人で、そのうち約1,700万人がソマリアに住む。ソマリアではアラビア語と並ぶ公用語で、ソマリランドでも公用語、エチオピアではソマリ州の作業言語になっている。ジブチでは国語、ケニアでは少数言語として認められている。
系統はアフロ・アジア語族のクシ語派。アラビア語やヘブライ語、アムハラ語と同じ大きな家族に入るが、枝は別だ。クシ語派のなかで、いちばんよく記録されてきた言語でもある。
どんな音がする?
耳に残るのは、のどの奥の音である。ソマリ語の綴りでは、x がのどの奥で息をこする「ハ」、c は同じ場所で声をふるわせる音を表す。英語の x や c とはまったく違う読み方だ。q はのどの奥の「ク」、dh は舌をそり返してはじく、「ド」と「ル」のあいだのような音になる。
母音を2つ重ねると長くのばし、長さで意味が変わる。声の高さも意味を分けるが、これを声調と見るか高さアクセントと見るかは、研究者のあいだで意見が分かれている。
どんな文字で書く?
いまの書き言葉はラテン文字である。英語のアルファベットから p・v・z を除いた文字に、dh・kh・sh の3つの組み合わせを加えて使う。この綴りは、言語学者シレ・ジャマ・アハメドが整えたもので、1972年に正式な表記として決まった。革命3周年の10月21日、パレードの上からこの新しい文字で刷ったビラがまかれた、と伝えられている。
それまでにも文字の試みはあった。宗教者のあいだではアラビア文字で書くことがあり、1920年ごろにはオスマン・ユスフ・ケナディードが独自のオスマニヤ文字を作った。左から右へ書く文字で、ラテン文字に決まるまで使われていた。
文法のクセ
語順は日本語と同じ主語・目的語・動詞。もうひとつの特徴は、文のどこに話の焦点があるかを示す小さなことばだ。baa や ayaa を名詞のあとに置くと、「ほかでもない、それが」と、その語を際立たせる。
名詞には男性と女性があり、面白いことに、複数になると性が入れかわることが多い。単数で男性あつかいの名詞が、複数では女性の形で受けられる。言語学では「性の極性」と呼ばれる仕組みである。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
長いあいだ、ソマリ語は口で伝えることばだった。19世紀のイギリスの旅行家リチャード・バートンは、著書『東アフリカへの最初の一歩』に「この国は詩人であふれている」と書き、族長が詩人を抱えて自分をたたえさせていたことも記した。のちにカナダの作家マーガレット・ローレンスは、ソマリアを「詩人の国」と呼んだ。
20世紀には、文字をどれにするかが長く議論になった。1972年にラテン文字に決まると、ソマリ語は教育の言語として学校で使われるようになった。現代の詩人では、ハドラーウィの名で知られるモハメド・イブラヒム・ワルサメが、多くの人に偉大な詩人と見なされている。
いま、この言語は
国の公用語として学校や放送で使われ、言語としては安定している。さらに、内戦などで国を離れた人びとによって、ソマリ語を話す共同体は北米やヨーロッパにも広がった。新しい土地でも、詩と歌は大切な集まりの中心にある。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
ラテン文字なので、まずは x・c・q・dh の読み方を覚えるところから。英語の読み方を一度忘れるのがこつだ。最初の一語は Mahadsanid(ありがとう)がいい。
慣れてきたら、短い詩や歌を声に出してみたい。行ごとにくり返される同じ音を探すと、頭韻の仕組みが耳でわかってくる。詩の国のことばは、聞いて覚えるのがいちばんの近道である。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。