どこで、誰が話している?
アルバニア語は、バルカン半島の西、アドリア海に面したアルバニアと、そのとなりのコソボの公用語だ。北マケドニアやモンテネグロでも公用語のひとつとして使われ、イタリアやクロアチア、ルーマニア、セルビアでは少数言語として認められている。
母語として話す人は世界で約750万人(2017年の推計)。そのうち約600万人がバルカン半島に住んでいる。この言語で自分たちのことばは shqip(シュチプ)、国は Shqipëri(シュチプリ)と呼ぶ。
どんな音がする?
標準語には母音が7つ、子音が29ある。耳に残るのは ë の音だ。英語の about の a のような、口の力を抜いたあいまいな母音で、単語の終わりでは聞こえないほど弱くなることもある。「5」は pesë と書くが、聞こえるのは「ペス」に近い。
英語の th にあたる音が2つあるのも特徴だ。にごる音は dh、にごらない音は th と書き分ける。q は「キ」と「チ」のあいだのような音で、ほかの言語の q とはまったくちがう。「ありがとう」の Faleminderit(ファレミンデリト)は、アクセントを後ろから2つめの de に置いて言う。
どんな文字で書く?
いまの文字はラテン文字で、全部で36文字ある。ç と ë の2つの記号つきの字に、dh・gj・ll・nj・rr・sh・th・xh・zh の9つの2文字組みを、それぞれ1文字として数える。
この形が決まったのは、1908年11月にマナスティル(いまの北マケドニアのビトラ)でひらかれた会議だった。それまでは、ギリシャ文字やアラビア文字を使う人もいれば、18世紀のエルバサン文字や、1844年に作られた33文字のヴィスクチ文字のように、アルバニア語のために考えられた文字もあった。
文法のクセ
「その〜」にあたる冠詞は、名詞のうしろにくっつける。「山」は mal、「その山」は mali。「鳥」は zog、「その鳥」は zogu。「少女」は vajzë、「その少女」は vajza になる。名詞には男性・女性・中性の3つの性があり、格は6つある。
めずらしいのは、驚きを表す動詞の形(感嘆法)があることだ。上の「あなたはアルバニア語を話す」は Ti flet shqip。これを Ti folke shqip! と言うと、「えっ、あなたアルバニア語を話すんだ!」という驚きになる。皮肉や疑い、人から聞いた話を伝えるときにも使う。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
アルバニア語は、インド・ヨーロッパ語族のなかでひとつだけで1本の枝をつくっている。同じ枝に生き残った兄弟の言語がない。古いバルカン半島のことばの、ただひとりの子孫と考えられている。
書かれた記録はおそく、いちばん古いのは1462年、大司教パル・エンジェリが書き残した洗礼のことばだ。1555年にはジョン・ブズクが最初の印刷本『ミサ典書(Meshari)』を出した。長くラテン語と接してきたため、「木」の pemë、「とても」の shumë、「友だち」の mik のように、ラテン語から入った単語が多い。
方言は、中部を流れるシュクンビン川をさかいに、北のゲグ方言と南のトスク方言に分かれる。1972年にティラナでひらかれた正書法会議で、トスク方言をもとにした標準語の綴りが決まった。
いま、この言語は
アルバニアとコソボで国のことばとして使われ、消える心配のある言語ではない。
おもしろいのは、自分たちの名前の由来だ。Shqipëri は「ワシの国」と説明されることが多く、国旗にも黒い双頭のワシが描かれている。ただ、言語学では、shqip は「はっきり話す」という意味の動詞 shqipoj から来たという説が広く受け入れられている。「わたしたちのことばがわかる人」が、もとの意味だったのかもしれない。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
まずは36文字の読み方を覚えるのが近道だ。綴りと音がほぼ1対1で対応しているので、ë・q・xh・dh・th のいくつかに慣れれば、初めて見る単語もだいたい声に出して読める。
次に、冠詞が名詞のうしろにつく形に目を慣らすといい。mal と mali、vajzë と vajza を見分けられるようになると、看板や新聞の見出しがぐっと読みやすくなる。旅先では Tungjatjeta とあいさつしてみたい。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。