どこで、誰が話している?
タイ語はタイ王国の唯一の公用語だ。バンコクを中心とする中部のことばが標準語になっていて、学校・役所・テレビはこれで動いている。母語話者は約2,700万人と数えられるが、それとほぼ同じかそれ以上の約4,400万人が第二言語として使っていて、あわせると約7,100万人になる。
数字がこう分かれるのは、タイの東北部(イサーン)や北部、南部には、それぞれ地元のことばがあるからだ。家では地元のことば、外では標準タイ語、という暮らしがふつうにある。系統はタイ・カダイ語族で、隣のラオスのラオ語とはかなり近い親戚にあたる。
どんな音がする?
タイ語には5つの声調がある。平らな「中」、低い「低」、上から下がる「下降」、高い「高」、下がってから上がる「上昇」。同じ「マイ」でも声の高さの動きで別の単語になる。
それを遊びにした早口ことばが有名だ。ไหมใหม่ไม่ไหม้(マイ マイ マイ マイ)。日本語の耳にはマイが4回並ぶだけだが、意味は「新しい絹は燃えない」。絹・新しい・〜ない・燃える、の4語が、声調と綴りだけで区別されている。
どんな文字で書く?
タイ文字は、子音字に母音の記号をくっつけて書くタイプの文字だ。子音字は44あるが、表す音は21種類ほど。同じ音に複数の字があるのは、サンスクリット語などから入った単語の綴りを守ってきたからだ。母音の記号は子音の上・下・左・右のどこにでもつき、さらに声調記号が4種類ある。
いちばん驚くのは、単語と単語のあいだに空白を入れないこと。空白が入るのは、句や文の切れ目くらいだ。子音字にはひとつずつ呼び名があって、最初の字 ก は「コー・カイ(ニワトリのコー)」と、その字で始まる単語とセットで覚える。
文法のクセ
単語の形が変わらない。動詞の活用も、名詞の複数形も、男性名詞・女性名詞の区別も、冠詞もない。時は文脈や小さな語を足して表す。語順は「主語・動詞・目的語」で、主語はよく省かれる。
日本語話者に身近なのがものを数えることばだ。日本語の「本」「枚」「匹」のように、タイ語でも数えるものに合わせた語をつける。もうひとつが文末の丁寧さ。話し手が男性ならクラップ、女性ならカーを文の終わりに添えると、ていねいな言い方になる。
この言語でしか言えない言葉
歴史をひとことで
タイ語を話す人びとは、1千年紀のあいだに北から南へ移り住んできたとされる。13世紀にはスコータイ王朝が起こり、タイ文字は1283年にラームカムヘーン王が作ったと伝えられる。もとになったのは古いクメール文字で、さかのぼるとインドのブラーフミー系の文字に行き着く。王の事績を刻んだ碑文は1292年のものとされるが、本物かどうかをめぐっては研究者のあいだで議論もある。
仏教とともにパーリ語・サンスクリット語が、隣のクメール語やモン語からも多くの単語が入り、語彙の半分以上はこうした借用に由来する。国の名前は長く「シャム」だったが、1939年に「タイ」へ改められた。この時期の政府は、各地のことばより中部の標準タイ語を広める政策も進めている。
いま、この言語は
危機度は「安全」。行政・教育・出版・放送・インターネットのすべてがタイ語で動いていて、音声合成や入力の対応もそろっている。
ただ、単語を空白で区切らない書き方は、コンピュータにとっては難問だった。検索や翻訳、音声読み上げの前に、まず「どこで単語が切れるか」を判定する処理が要る。タイ語のデジタル化は、この見えない区切りを探す技術とともに進んできた。
ことばカード
もし学ぶなら
おすすめの入り口
NHK WORLD-JAPAN のタイ語サービスでは、日本のニュースや暮らしの話題をタイ語で読んだり聴いたりできる。中身を知っている話題から入ると、空白のない文でも単語の切れ目をつかみやすい。
最初の山は5つの声調と、子音の「クラス」によって声調が決まるしくみ。いっぽうで、活用がなく、数えることばや主語の省略など日本語と似た感覚も多い。まずは「サワッディー・クラップ(カー)」を、声の上げ下げごと真似するところから始めたい。
話し手の数は推計で、資料によって幅があります。音声は端末の合成音声で、話者による録音ではありません。