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ことばの図鑑 — 中国・台湾・シンガポール
普通话

中国語(北京語)——4つの声調と、約10万字の漢字

同じ「マ」が、声の上げ下げで母にも馬にもなる。4つの声調で話し、10万を超える漢字を持つ。母語にしている人の数は、世界のどの言語よりも多い。

2026-10-02 / 言語と物語の図鑑 編集部

どこで
中国・台湾・シンガポール
話し手
約11億8,000万人
系統
シナ・チベット語族
危機度
安全

どこで、誰が話している?

中国語の北京語(標準中国語)は、母語話者の数が世界でいちばん多い言語だ。母語として話す人は約9億9,000万人、第二言語の話し手を合わせると約11億8,000万人になる。

中国本土では「普通话(プートンホア、ふつうのことば)」、台湾では「國語(国のことば)」と呼ばれ、どちらでも公用語になっている。シンガポールでも4つの公用語のひとつで、国連の6つの公用語にも入っている。標準の発音は、北京の話しことばがもとになっている。

どんな音がする?

いちばんの特徴は声調だ。同じ音でも、声の高さの動き方で意味が変わる。北京語の声調は4つで、これに軽く短く読む「軽声」が加わる。

mā 妈 / má 麻 / mǎ 马 / mà 骂母 / 麻 / 馬 / ののしる

高く平らに伸ばす1声、下から上がる2声、低くおさえる3声、上から一気に落とす4声。音節の種類は、声調を無視すると約400しかないが、声調で分けると約1,300になる。

声調は隣の音で変わることもある。3声が2つ続くと、前のほうが2声になる。だから「你好」は nǐ hǎo と書いて、ニーハオの「ニー」を上がり調子で読む。

どんな文字で書く?

書くのは漢字だ。いちばん古い記録は、紀元前13世紀ごろに亀の甲や牛の骨に刻まれた甲骨文字である。字の数は多く、1994年の『中華字海』には約8万5,000字が収められ、文字コードの規格ユニコードには10万字を超える漢字が登録されている。

ただし、ふだん使う字はずっと少ない。よく使う語彙を書くのに必要なのは約3,500〜5,000字で、2013年に中国が定めた『通用規範漢字表』は8,105字である。

中国本土とシンガポールでは、画数を減らした簡体字を使う。1956年に方針が発表され、書は书、車は车になった。台湾・香港・マカオでは、もとの形の繁体字を使い続けている。発音を示すローマ字はピンインで、1958年に正式に採用された。

文法のクセ

動詞は、主語や時によって形を変えない。「わたしが行く」も「彼が行った」も、動詞は同じ「去(チュィ)」のまま。時は「きのう」「あした」などのことばや、文につく小さな語で表す。

そのかわり、数を数えるときは量詞が欠かせない。日本語の「1冊」「1枚」に近いが、ずっと細かい。本は「一本书」、紙や机のような平たいものは「一张」、細長いものは「一条」。迷ったときに使える万能の量詞が「个(ゴ)」である。

この言語でしか言えない言葉

加油
jiāyóu ジアヨウ
意味がんばれ!。文字どおりには「油を足す」「燃料を入れる」。スポーツの応援でも、試験前の友だちにも使う。1960〜70年代のマカオのカーレースで、観客が「アクセルを踏め」と叫んだのが始まりという説がある。
撒娇
sājiāo サージアオ
意味かわいがってくれる相手に、わざと甘えてみせること。子どもでも恋人でもペットでも使える。お願いを聞いてほしいときの、あの声と仕草に一語で名前がついている。

歴史をひとことで

中国は地域ごとの話しことばの差が大きく、広東語のように会話では通じない言語も多い。そこで20世紀に入ると、国じゅうで通じる共通語づくりが進んだ。1932年、北京の発音を標準とすることが決まる。

1949年の中華人民共和国の成立後は、これを「普通话」と呼んで広めた。1958年には周有光らがつくったピンインが正式に採用され、1982年には国際標準化機構(ISO)の規格にもなった。

いま、この言語は

危機とは無縁の大言語だ。国連の公用語のひとつで、中国本土・台湾・シンガポールの学校でも教えられている。

入力の方法も変わった。いまはピンインで音を打ちこみ、候補から漢字を選ぶのがふつうだ。手で書く機会が減り、読めるのに書けない字が出てくる現象は「提笔忘字(筆をとると字を忘れる)」と呼ばれている。

ことばカード

こんにちは
你好
nǐ hǎo ニーハオ
ありがとう
谢谢
xièxie シエシエ
さようなら
再见
zàijiàn ツァイジエン
がんばれ
加油
jiāyóu ジアヨウ
中国
中国
Zhōngguó ジョングオ
1一 yī イー2二 èr アル3三 sān サン4四 sì スー5五 wǔ ウー

もし学ぶなら

おすすめの入り口

日本語を話す人は、漢字の意味がだいたい読める分だけ有利だ。ただし簡体字は形が変わっている字も多いので、日本の漢字と見比べながら覚えるといい。

最初の山は声調である。ピンインの記号を見ながら、ma の4つの声調を口に出すところから始めたい。単語はかならず声調ごと覚える。ここを後回しにしないことが、通じる中国語への近道になる。