物語の図鑑 — 日本
八岐大蛇

やまたのおろち

追放されたスサノオが出雲に降り、八つの頭を持つ大蛇を八つの酒桶で酔わせて斬る。尾から出た剣が草薙剣。

古事記 上巻 / 712年成立

どこの話
日本
出典
古事記 上巻
時代
712年成立
モチーフ
大蛇退治
英雄の旅

あらすじ

高天原を追放されたスサノオは、出雲の斐伊川の上流に降りる。川を箸が流れてくるので上流に人がいると知り、行ってみると老夫婦と娘が泣いている。

老人が言うには、八つの頭と八つの尾を持つ大蛇が毎年やってきて娘をひとりずつ食い、八人いた娘がこの一人になった。スサノオは娘クシナダヒメを妻にすることを条件に退治を引き受ける。

八回醸した強い酒を八つの桶に用意し、八つの門を作って待つ。大蛇は八つの頭をそれぞれ桶に突っ込んで飲み、酔って眠る。スサノオは剣で切り刻む。尾を切ったとき、剣の刃が欠けた。中から出てきたのが、後に草薙剣と呼ばれる剣。スサノオはこれをアマテラスに献上する。

読みどころ

竜退治の英雄は世界中にいるが、スサノオは力ではなく酒で倒す。ここは北欧のトールや英国のベーオウルフと違い、むしろオデュッセウスが一つ目巨人に葡萄酒を飲ませる場面に近い。

斐伊川はたびたび氾濫する川で、川が八つに分かれて流れる様子と、砂鉄を採る「たたら」製鉄で川が赤く濁る様子が、大蛇のイメージの元にあるという解釈が広く受け入れられている。尾から鉄の剣が出てくるのは、その連想で読むと腑に落ちる。

そして、この剣は三種の神器のひとつになる。荒ぶる神が追放先で得た剣が、王権の正統性を支える宝になる。乱暴者の弟が、結果として姉の権威を強化する構図。

八塩折の酒を醸み、また垣を作り廻し、その垣に八つの門を作り古事記 上巻

世界の似た物語

「水を閉じ込めた蛇を倒して川を流す」インドのインドラとヴリトラは、大蛇を治水の象徴と読む点で最も近い。バビロニアのマルドゥクは海の竜ティアマトを倒し、死体から世界を作る。ギリシアのヘラクレスが倒すヒュドラも多頭の蛇で、首を切ると二本生えてくる。

あらすじは「古事記 上巻」の主要な版にもとづく要約です。伝承には多くの異伝があり、ここに載せた筋はそのひとつです。