フランス語の「80」は、「4つの20」である
フランス語で80は quatre-vingts。直訳すると「4つの20」だ。97になるとさらに込み入って、quatre-vingt-dix-sept、つまり「4×20+10+7」と言う。70は soixante-dix(60+10)で、60から先はしばらく20ずつの数え方が顔を出す。
ただし同じフランス語でも、ベルギーやスイスでは70を septante、90を nonante と、10ずつの素直な語で言う。スイスのヴォー州・ヴァレー州・フリブール州では80も huitante だ。パリには Quinze-Vingts(15の20)という名の病院があり、もとは300床を意味していた。20で数える習慣は、かつてはもっと広く使われていたのである。
10で数える言語は、約3分の2
『世界言語構造地図(WALS)』でバーナード・コムリーが約196の言語の数詞を調べた集計がある。
| 数え方の型 | 例 | 言語数(約) |
|---|---|---|
| 10進法 | 中国語・トルコ語 | 125 |
| 20進と10進の混合 | バスク語・イボ語 | 22 |
| 純粋な20進法 | ディオラ・フォニ語など | 20 |
| ほかの基数 | 60や80を単位にする言語 | 5 |
| 数詞が少ない | 大きな数の語を持たない言語 | 20 |
| 体の部位で数える | オクサプミン語など | 4 |
10進法が多いのは、指が10本だからだと説明されることが多い。すると20進法は、足の指まで使った数え方ということになる。
20で数える言語たち
バスク語では20が hogei、40が berrogei(2つの20)、60が hirurogei(3つの20)、80が laurogei(4つの20)になる。100からは10進に切り替わるので、「混合型」に分類される。
デンマーク語はもっと手ごわい。60の tres は古い形 tresindstyve(3×20)を縮めた語で、50の halvtreds は「半分・3つめ」、つまり「3つめの20が半分」=2.5×20を意味する。70の halvfjerds は3.5×20、90の halvfems は4.5×20だ。
ウェールズ語の伝統的な数え方も20が基本で、40は deugain(2つの20)、80は pedwar ugain(4つの20)。18を deunaw(2つの9)と言う形まである。いまの学校で習う pedwar deg(4つの10)のような10進の言い方は、19世紀にアルゼンチンのパタゴニアへ移住したウェールズ人が帳簿づけのために考え出したもので、ウェールズ本国の教育に入ったのは1940年代後半だという。
引き算で数える言語もある。ヨルバ語も20進法を土台にしていて、15は「20から5」、16は「20から4」と、次の区切りから引いて言う。アイヌ語も同じく20進法で、40は「2つの20」、30は「10で40」、つまり「あと10で2つの20になる数」と表す。
指でも足でもなく、体で数える
パプアニューギニアで話されるオクサプミン語には、体の27か所を順にたどる数え方がある。片手の親指を1として、手首、腕、首、頭の横と上がっていき、鼻が14。そこから反対側へ下って、もう片方の手の小指で27になる。
もともとは物を数えるための仕組みで、計算には使われていなかった。人類学者ジェフリー・サックスの調査によれば、貨幣が入って商店での取引が始まり、学校教育が広がると、この体の数え方を使って足し算や引き算をする工夫が生まれたという。数え方は、暮らしが変わると一緒に変わるのである。
で、日本語はどうか
日本語は、きれいな10進法である。「二十一」は「2×10+1」で、中国語の 二十六 も同じ組み立てだ。ただ、英語が3桁ごとに thousand・million と区切るのに対して、日本語や中国語は4桁ごとに「万・億・兆」と区切る。10,000は英語では「10の1,000」、日本語では「1万」。同じ10進法でも、ひとまとまりの大きさが違う。
そして日本語にも20だけの特別な語が残っている。20歳の「はたち」、20日の「はつか」だ。英語にも20を表す score があり、リンカーンのゲティスバーグ演説は Four score and seven years ago(4つの20と7年前)で始まる。索引からほかの言語の数え方をのぞくと、その土地の人が何を束にして数えてきたかが見えてくる。
言語や文字の分類は研究者によって幅があります。本文は代表的な整理にもとづく概説です。