物語の図鑑 — ヨーロッパ
オルフェウスとエウリュディケ

おるふぇうす

竪琴で冥王を泣かせ、妻を連れ帰る許しを得た。ただし、地上に出るまで振り返ってはならない。

ギリシア神話(ウェルギリウス・オウィディウス) / 前1世紀

どこの話
ヨーロッパ
出典
ギリシア神話(ウェルギリウス・オウィディウス)
時代
前1世紀
モチーフ
冥界下り

あらすじ

竪琴の名手オルフェウスの妻エウリュディケは、結婚して間もなく蛇に咬まれて死ぬ。オルフェウスは冥界へ下り、竪琴を奏でる。渡し守は舟を出し、番犬ケルベロスは伏せ、亡者たちの罰は止まり、冥王ハデスと王妃ペルセポネは涙を流す。

ハデスは妻を返すと言う。ただし条件がある。地上に出るまで、オルフェウスは前を歩き、決して振り返ってはならない。

長い坂道を登り、出口の光が見えたところで、オルフェウスは妻が本当についてきているか不安になり、振り返る。エウリュディケは手を伸ばしたまま、霧のように冥界へ引き戻される。

その後オルフェウスは女性を遠ざけて暮らし、怒った信女たちに八つ裂きにされる。川を流れる首は、それでも歌い続けた。

読みどころ

禁止は一つだけ。しかもごく簡単。それでも守れない。物語が語っているのは、愛は疑いに勝てないということか、あるいは、死者は取り戻せないという事実を、ひとつの動作に圧縮したものか。

ウェルギリウスとオウィディウスが伝えるこの筋は、実はギリシアの古い版とは違う可能性がある。プラトンの『饗宴』では、神々はオルフェウスに妻のだけを見せて追い返した、とある。「振り返り」の場面は、ローマ時代に洗練された結末かもしれない。

彼は立ち止まり、そして、ああ、もう光の中にいたのに、忘れて、心が負けて、振り返った。ウェルギリウス『農耕詩』第4巻

世界の似た物語

古事記のイザナギは同じ場面で「見るな」を破り、逃げ帰って大岩で道を塞ぐ。シュメールのイナンナは自ら冥界で殺され、夫を身代わりに差し出す。ポポル・ヴフの双子は冥界で殺され、蘇り、太陽と月になる。四つを並べると、同じ「下って帰る」型でも、帰り方がまるで違うのがわかる。

あらすじは「ギリシア神話(ウェルギリウス・オウィディウス)」の主要な版にもとづく要約です。伝承には多くの異伝があり、ここに載せた筋はそのひとつです。