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漢字はいくつあるのか——常用漢字と大きな辞書の字数

アルファベットは26字。では漢字は? 答えは2,000にも5万にも10万にもなる。辞書が集めた数、国が決めた数、コンピューターが扱う数を並べてみる。

2026-10-20 / 言語と物語の図鑑 編集部

「漢字はいくつあるか」に、答えはひとつではない

アルファベットなら26字、ひらがななら46字と、だいたい答えが決まる。ところが漢字は、尋ねる相手によって答えが2,000にも5万にも10万にもなる。漢字は新しく作ることができ、字形の違うものを別の字と数えるかどうかでも数が変わるからだ。

つまり「漢字の数」は、ひとつの数ではなく、目的ごとに引かれた複数の線である。辞書が集めた数、国が「よく使う」と決めた数、コンピューターで扱える数。この記事では、その線を順に見ていく。

辞書は、時代ごとに字を増やしてきた

漢字を部首で分類した最初期の字書は、後漢の許慎による『説文解字』である。西暦100年ごろに序が書かれ、見出しの字は約9,353字だった。それから約1,600年後、清の康熙帝の命で1716年に作られた『康熙字典』は、約4万7千字を収める。漢和辞典の部首の並びは、いまもこの字典にならうことが多い。

辞書成立収録字数
説文解字(中国)100年ごろ約9,353字
康熙字典(中国)1716年約47,035字
大漢和辞典(日本)1955〜1960年約5万字
中華字海(中国)1994年約85,568字

日本の『大漢和辞典』は、諸橋轍次を代表として編まれ、親字約5万字、熟語約53万語を収める。『中華字海』の約8万5千字は、異体字や簡体字・繁体字の重複も含んだ数だとされる。字数が増えたのは、新しい字が次々に生まれたからというより、古い文献に一度だけ出てくる字や、同じ字の書き方違いまで拾い集めた結果である。

いちばん大きい数——コンピューターの約10万字

いま最も大きな「漢字の数」は、文字コードの国際規格 Unicode にある。中国・日本・韓国・ベトナムなどの漢字を、同じ字なら1つにまとめて番号をつけた「CJK統合漢字」で、拡張を重ねて約10万字(Wikipedia によれば最新版で101,997字)に達した。

このなかには、人名や地名にしか使われない字、歴史資料に一度だけ現れる字、ベトナムの字喃のように漢字にならって作られた字も含まれる。読める人がほとんどいない字でも、資料をデジタルで正しく残すには番号が必要になる。約10万という数は「使われている字」ではなく「記録しておきたい字」の数だと考えたほうがよい。

国が決める「ふつうの字」——中国の8,105字

辞書とは逆向きに、国が「これだけ使えば足りる」という範囲を決める線もある。中国語の中国本土では、2013年に『通用規範漢字表』が公布された。収録は約8,105字で、そのうち日常によく使う一級字が約3,500字、二級が約3,000字、専門分野や人名・地名のための三級が約1,605字である。

韓国語では、漢字はハングルの陰に退いたが、名前には今も漢字が使われる。人名に使える漢字の表は1991年に導入され、2015年までに約8,142字へ広がった。読み書きの日常からは離れても、名前の字としては多くの漢字が生きている。

で、日本語はどうか

日本語の「ふつうの字」の線は、常用漢字表である。1946年の当用漢字は約1,850字、1981年の常用漢字は約1,945字、2010年の改定で196字が加わり、5字が外れて約2,136字になった。このとき加わったのが「挨」「曖」「嵐」などで、外れたのが「匁」「銑」などだ。

線の名前字数何のための線か
学年別漢字配当表約1,026字小学校で学ぶ字
常用漢字表(2010年)約2,136字一般の社会生活の目安
常用漢字+人名用漢字約3,000字子どもの名前に使える字
JIS第1・第2水準約6,355字パソコンで扱う基本の字

小学校で約1,026字、中学以降で残りの約1,110字を学び、常用漢字がそろう。名前に使える字は人名用漢字を足して約3,000字、1978年に定められた JIS の第1・第2水準は約6,355字である。新聞や本を読むのに必要な字は数千字にとどまる一方、辞書は5万字、Unicode は10万字を抱えている。

漢字の数は、読める字の数でも、存在する字の数でもなく、どこに線を引くかの数である。常用漢字表・康熙字典・Unicode の字数より