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母語話者がいちばん多い言語と、いちばん学ばれている言語は違う

話す人の総数なら英語、母語話者なら中国語、学ぶ人ならまた英語。「いちばん大きな言語」は、物差しを変えるたびに入れ替わる。

2026-09-28 / 言語と物語の図鑑 編集部

英語を話す人の約4人に3人は、英語が母語ではない

世界でいちばん話されている言語は何か。答えは「どう数えるか」で変わる。言語の統計でよく使われる『Ethnologue』の2026年版によると、英語を話す人は約14億9,300万人で、数のうえでは1位になる。ところがそのうち、英語を生まれて最初に覚えたことば、つまり母語(L1)として話す人は約3億7,200万人しかいない。残りの約11億2,100万人は、あとから学んだ第二言語(L2)として英語を使っている。

いっぽう母語話者の数で数えると、1位は中国語(標準中国語)の約9億8,800万人になる。英語は3位だ。「いちばん話されている言語」と「いちばん多くの人の母語になっている言語」は、同じではない。

母語で数えるか、話せる人で数えるか

Ethnologue 2026年版の数字を、母語話者と第二言語話者に分けて並べてみる。

言語母語話者(約)第二言語話者(約)合計(約)
英語3億7,200万11億2,100万14億9,300万
標準中国語9億8,800万1億9,400万11億8,300万
ヒンディー語3億4,700万2億6,400万6億1,100万
スペイン語4億8,700万7,500万5億6,100万
フランス語7,500万2億5,800万3億3,400万
インドネシア語7,800万1億7,700万2億5,500万

スペイン語は話し手の大半が母語話者で、母語だけで数えると世界2位になる。逆にフランス語は、話す人の約4分の3が第二言語話者だ。アフリカの多くの国で、学校や行政のことばとして使われているからである。

母語話者がほとんどいない「大言語」

母語話者と第二言語話者の差がいちばん大きいのは、インドネシア語やスワヒリ語のような、多くの言語が話される地域の「共通語」だ。インドネシアには700を超える言語があり、家では地元のことばを話し、学校や仕事ではインドネシア語を使う人が多い。スワヒリ語も、母語話者は約530万人とされるのに、第二言語として使う人は約9,200万人にのぼる。

さらに極端なのがアラビア語の書きことば、現代標準アラビア語である。Ethnologueはこれを母語話者ゼロ、第二言語話者約3億3,500万人として数えている。人びとが家で話すのはエジプト方言やモロッコ方言などの口語で、標準アラビア語は学校で身につけるものだからだ。数え方によっては、話し手が3億人を超える言語に、母語話者がひとりもいないことになる。

「学ばれている言語」の順位は、また別

もうひとつの物差しが、いま学んでいる人の数だ。語学アプリのDuolingoが出した2025年のレポートでは、利用者が学んでいる言語の順位は、英語・スペイン語・フランス語・日本語・ドイツ語・韓国語・イタリア語・中国語の順だった。英語は、調べた国のうち約8割、154か国で1位だったという。

母語話者が約9億8,800万人いる中国語は、この順位では8位にとどまる。逆に日本語は4位に入り、この年はじめてドイツ語を上回った。話す人の多さと、学びたい人の多さは、かならずしも比例しない。アプリの利用者は世界の学習者の一部にすぎないので、あくまでひとつの目安ではある。

で、日本語はどうか

日本語は、母語話者の数では約1億2,400万人で、Ethnologue 2026年版の8位に入る。ロシア語の次で、世界的に見れば話し手の多い言語だ。ただし日本語の話し手は、そのほとんどが母語話者で、日本の中にいる。英語やフランス語とは正反対の形をしている。

それでも学ぶ人は増えている。国際交流基金の2024年度の調査では、海外の学校などで日本語を学ぶ人は約400万人で、調査を始めてから最多になった。この数には、アプリや独学で学ぶ人は含まれていない。

「大きな言語」とひとくちに言っても、母語として受け継がれて大きい言語と、共通語として学ばれて大きい言語がある。英語は後者の代表で、日本語は前者の側にいる。

英語を話す約14億9,300万人のうち、母語話者は約3億7,200万人。Ethnologue 2026年版(Wikipedia経由)