英語を話す人の約4人に3人は、英語が母語ではない
世界でいちばん話されている言語は何か。答えは「どう数えるか」で変わる。言語の統計でよく使われる『Ethnologue』の2026年版によると、英語を話す人は約14億9,300万人で、数のうえでは1位になる。ところがそのうち、英語を生まれて最初に覚えたことば、つまり母語(L1)として話す人は約3億7,200万人しかいない。残りの約11億2,100万人は、あとから学んだ第二言語(L2)として英語を使っている。
いっぽう母語話者の数で数えると、1位は中国語(標準中国語)の約9億8,800万人になる。英語は3位だ。「いちばん話されている言語」と「いちばん多くの人の母語になっている言語」は、同じではない。
母語で数えるか、話せる人で数えるか
Ethnologue 2026年版の数字を、母語話者と第二言語話者に分けて並べてみる。
| 言語 | 母語話者(約) | 第二言語話者(約) | 合計(約) |
|---|---|---|---|
| 英語 | 3億7,200万 | 11億2,100万 | 14億9,300万 |
| 標準中国語 | 9億8,800万 | 1億9,400万 | 11億8,300万 |
| ヒンディー語 | 3億4,700万 | 2億6,400万 | 6億1,100万 |
| スペイン語 | 4億8,700万 | 7,500万 | 5億6,100万 |
| フランス語 | 7,500万 | 2億5,800万 | 3億3,400万 |
| インドネシア語 | 7,800万 | 1億7,700万 | 2億5,500万 |
スペイン語は話し手の大半が母語話者で、母語だけで数えると世界2位になる。逆にフランス語は、話す人の約4分の3が第二言語話者だ。アフリカの多くの国で、学校や行政のことばとして使われているからである。
母語話者がほとんどいない「大言語」
母語話者と第二言語話者の差がいちばん大きいのは、インドネシア語やスワヒリ語のような、多くの言語が話される地域の「共通語」だ。インドネシアには700を超える言語があり、家では地元のことばを話し、学校や仕事ではインドネシア語を使う人が多い。スワヒリ語も、母語話者は約530万人とされるのに、第二言語として使う人は約9,200万人にのぼる。
さらに極端なのがアラビア語の書きことば、現代標準アラビア語である。Ethnologueはこれを母語話者ゼロ、第二言語話者約3億3,500万人として数えている。人びとが家で話すのはエジプト方言やモロッコ方言などの口語で、標準アラビア語は学校で身につけるものだからだ。数え方によっては、話し手が3億人を超える言語に、母語話者がひとりもいないことになる。
「学ばれている言語」の順位は、また別
もうひとつの物差しが、いま学んでいる人の数だ。語学アプリのDuolingoが出した2025年のレポートでは、利用者が学んでいる言語の順位は、英語・スペイン語・フランス語・日本語・ドイツ語・韓国語・イタリア語・中国語の順だった。英語は、調べた国のうち約8割、154か国で1位だったという。
母語話者が約9億8,800万人いる中国語は、この順位では8位にとどまる。逆に日本語は4位に入り、この年はじめてドイツ語を上回った。話す人の多さと、学びたい人の多さは、かならずしも比例しない。アプリの利用者は世界の学習者の一部にすぎないので、あくまでひとつの目安ではある。
で、日本語はどうか
日本語は、母語話者の数では約1億2,400万人で、Ethnologue 2026年版の8位に入る。ロシア語の次で、世界的に見れば話し手の多い言語だ。ただし日本語の話し手は、そのほとんどが母語話者で、日本の中にいる。英語やフランス語とは正反対の形をしている。
それでも学ぶ人は増えている。国際交流基金の2024年度の調査では、海外の学校などで日本語を学ぶ人は約400万人で、調査を始めてから最多になった。この数には、アプリや独学で学ぶ人は含まれていない。
「大きな言語」とひとくちに言っても、母語として受け継がれて大きい言語と、共通語として学ばれて大きい言語がある。英語は後者の代表で、日本語は前者の側にいる。
言語や文字の分類は研究者によって幅があります。本文は代表的な整理にもとづく概説です。