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ことばのはなし — 数
本 枚 匹 · 个 · ตัว

「1本・1枚・1匹」——助数詞を持つ言語、持たない言語

数と名詞のあいだに「本・枚・匹」をはさむ言語は、世界の約3分の1。東アジアから太平洋へ、帯のように広がっている。

2026-10-14 / 言語と物語の図鑑 編集部

「鉛筆を3」とは言わない

日本語では「鉛筆3本」「紙3枚」「犬3匹」と言う。数と名詞のあいだに、ものの形や種類に合わせた小さな語が入る。これを日本語の文法では助数詞、言語学では数詞類別詞(numeral classifier)と呼ぶ。一方、英語は three pencils、three dogs と数を名詞に直接つける。

どちらが普通なのか。『世界言語構造地図(WALS)』第55章(David Gil)は、約400の言語を調べてこう分類している。

分類言語数(約400言語中)中身
類別詞なし260(約65%)数が名詞に直接つく
類別詞はあるが省いてよい62(約15.5%)つけてもつけなくても数えられる
類別詞が必須78(約19.5%)類別詞なしでは数えられない

ここで数えているのは、ものを種類ごとに「仕分ける」類別詞だ。a glass of water の glass のような「量をはかる」ことばは除いてある。量の単位はほとんどすべての言語にあるからだ。英語にも five head of cattle(牛5頭)、three pieces of paper(紙3枚)のように、それらしい形はある。ただし英語では例外的な言い方にとどまる。

東アジアから太平洋へ、帯のように広がる

WALS の地図で類別詞を持つ言語がいちばん集まっているのは、東アジアと東南アジアだ。その帯はインドネシアの島々を通ってミクロネシアまで続き、ニューカレドニアや西ポリネシアで細くなる。西へ行くと南アジアで薄れ、イランやトルコのあたりで「省いてよい」型として再び現れる。ペルシア語には汎用の類別詞が2つあるとされる。ほかに西アフリカ、北米の太平洋岸北西部、メソアメリカ、アマゾン川流域にも小さな集まりがある。

同じ東南アジアでも、フィリピノ語のもとになったタガログ語は類別詞を使わない。「2匹の犬」は dalawang aso で、数と名詞を小さなつなぎの音でつなぐだけだ。

何を基準に仕分けるのか——形と生き物

仕分けの基準でよく使われるのは、人かどうか、生き物かどうか、そして形である。中国語(普通話)では、張 zhāng は紙や机やベッドのような平たいもの、條 tiáo は細長くしなやかなもの、本 běn は本に使う。花は 三支花 とも 三朵花 とも言える。WALS によれば、細長いものの zhī を使うと茎のついた花を、丸いものの duǒ を使うと花の部分を思い浮かべさせるという。

語順は言語によって違う。タイ語は「名詞・数・類別詞」の順で、「先生5人」は ครู ห้า คน(先生・5・人)になる。ベトナム語の「2匹の犬」は hai con chó(2・匹・犬)で、数が先に来る。韓国語も動物に 마리、人に 명、紙のような平たいものに 장 を使い分ける。

いくつあるかは数え方しだいだ。中国語の場合、ふつうの辞書には約120〜150、中国の語彙等級の基準には81が載る。一方、日常会話の大部分は20あまりの中心的な類別詞でまかなえる、という研究者もいる。

「個」がなんでも引き受ける

中国語には、迷ったときに使える个 gèという汎用の類別詞がある。話しことばでは、ほかの特定の類別詞より何百倍も多く使われるという。1940年代以降、个 がほかの類別詞の代わりをする場面は増えている。それでも話し手にたずねると、多くの人は特定の類別詞のほうを「正しい」と答える。

類別詞が数え以外の仕事を持つ言語もある。広東語は数をつけない類別詞だけで「その〜」を表す。また「私の本」を 我本書(ngo5 bun2 syu1)と言い、類別詞 本 が「の」の役目をする。歴史をたどると、中国語の数の言い方は約3,000年以上前の甲骨文字にも見える。類別詞が文法上欠かせなくなったのは11世紀ごろ、という説がある。

で、日本語はどうか

日本語は、ものを数えるときにふつう助数詞をつける言語で、種類も多い。細長いものの「本」、平たいものの「枚」、小さな動物の「匹」、鳥の「羽」、機械の「台」、人の「人」。ウサギを鳥と同じ「羽」で数えるのは有名な例外で、理由には諸説がある。音も変わり、「1本」は いっぽん、「3本」は さんぼん になる。

そして日本語にも、中国語の 个 にあたる汎用の数え方がある。「ひとつ、ふたつ、みっつ」の「つ」だ。迷ったら「つ」や「個」に逃げられるのは、中国語の話し手とまったく同じ状況である。

数えるとき、日本語や中国語の話し手は、そのものが細長いか、平たいか、生きているかを毎回えらんでいる。約400言語のうち約140が数詞類別詞を持つ(WALS 第55章)
出典・参考:WALS Online: Chapter 55 Numeral Classifiers(Gil) / Wikipedia: Classifier (linguistics) / Wikipedia: Chinese classifier / Wikipedia: Japanese counter word / Wikipedia: Thai language
言語や文字の分類は研究者によって幅があります。本文は代表的な整理にもとづく概説です。